ライフ

乗り鉄歴46年、63才オバ記者が語る「鉄道旅行の楽しみ」

(撮影/野原広子)

オバ記者は鉄道で北海道へ(撮影/野原広子)

 体当たり企画などを得意とする『女性セブン』の名物ライター“オバ記者”こと野原広子が、世の中や身の回りのさまざまなトピックに、素直な意見を投げかける。今回は、”乗り鉄歴46年”というオバ記者が、鉄道旅行の楽しみを解説する。

 * * *
「従姉のYさんにハンコをついてもらわないといけないんだけど、お願いできない?」

 先日、80代の親戚に泣きつかれた。Yさんは北海道旭川市に住んでいるんだけど、「飛行機代を出す」とまで言われたら断れない。そういえば、私が最後にプライベートで旅行をしたのはちょうど1年前のこと。コロナ禍で出かけたのは、体に不具合が出てきた93才の母親の用事で、茨城の実家ばかりだ。親戚に詳しく事情を聞くと、移動手段は飛行機に限らなくてもいいみたい。

 ならば、少しでも旅気分に浸りたくて、発売中だった『大人の休日倶楽部パス JR東日本、JR北海道』を利用することにした。JR東日本と北海道の全線が新幹線を含めて乗り放題で2万6620円、という商品だ。乗り鉄歴46年の私に、ひと回り下の女友達・ゆみちゃんがつきあってくれた。東京発06時34分で、新函館北斗~札幌、約10時間の旅だ。

 週末とあって、東京から新函館北斗までの新幹線の乗客は8割ほど。しかし、それも仙台までで、新青森から先はスカスカになった。札幌から乗った「特急ライラック37号」の車内は、私たち以外に3人。1両にわずか5人しか乗っていない。夜の北の大地を、風を切って走る列車音に耳を澄ませていると鉄子の私は幸せなのだが、ここまでガラガラだとうすら寒くなる。

 夜8時過ぎに着いた旭川の駅は、木材をふんだんに使ったモダンな内装。有名な建築家・内藤廣さんの設計だというけれど、斬新な駅舎も人で賑わってこそだ。

 私が旭川を最初に訪れたのは、40年も昔の冬のこと。札幌のすすきのでパブを開く友人を10日ほど手伝った後、網走まで流氷を見に一泊旅行。その途中、「北海道でいちばん寒い町」と聞いて、深夜の旭川に降りてみたの。当時は国鉄時代、色気もそっけもない待合室だった。

 3年前、旭川を訪れたときに乗ったタクシーの運転手は、シャッター街になったメインストリートを走りながら、「この5年で人口が3万人減ってます」と言っていたけど、このコロナ禍でさらに酷いことになっているのは、誰に聞くまでもない。

 翌朝、Yさんに会って用事を済ませた後、私たちは旭川から稚内まで北上することにした。

「3密ってどこの世界のこと、だね」

 特急「宗谷」の中は、しわぶきひとつ聞こえない。私とゆみちゃんもまた、車窓を楽しみたいから、“窓際縦乗り”だ。稚内駅も旭川と同じで、目を見張るばかりのキラキラ、近代モダンな建物なんだよね。真新しい建造物が、こんなにも人の気持ちを沈ませるのか。

 しかし、憂鬱なことばかりじゃない。家に帰ると私はFacebookに「大人の休日倶楽部パスの、大人げない乗り方」という次のような文を載せたの。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
石川県の被災地で「沈金」をご体験された佳子さま(2025年4月、石川県・輪島市。撮影/JMPA)
《インナーの胸元にはフリルで”甘さ”も》佳子さま、色味を抑えたシックなパンツスーツで石川県の被災地で「沈金」をご体験 
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
隣の新入生とお話しされる場面も(時事通信フォト)
《悠仁さま入学の直前》筑波大学長が日本とブラジルの友好増進を図る宮中晩餐会に招待されていた 「秋篠宮夫妻との会話はあったのか?」の問いに大学側が否定した事情
週刊ポスト
新調した桜色のスーツをお召しになる雅子さま(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
雅子さま、万博開会式に桜色のスーツでご出席 硫黄島日帰り訪問直後の超過密日程でもにこやかな表情、お召し物はこの日に合わせて新調 
女性セブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
週刊ポスト