高校野球に続いてプロ野球も開幕し、いよいよ球春も満開に。コロナ禍は決して昨年より改善しているわけではないが、感染防止に何が必要かのノウハウは蓄積され、無事にシーズンを迎えられたことにファンは喜びを爆発させている。
セ・リーグの順位予想では、昨季ぶっちぎりのリーグ優勝を飾った巨人と、戦力アップが期待できる昨季2位・阪神の争いになると見る専門家が多い。昨年、阪神が巨人の独走を許した最大の理由は攻撃力の差にあった。チーム防御率でも巨人が3.34で1位だったが、阪神も僅差の3.35で2位。3位DeNAの3.76以下を大きく引き離していた。つまり、投手力では巨人と互角だったのである。
一方で攻撃力の差は歴然としていた。チーム打率は巨人.255(3位)に対して阪神.246(5位)、得点は巨人532(1位)に対して阪神494(4位)、本塁打は巨人135(1位T)に対して阪神110(3位T)。細かいところでは、阪神は安打数が6位、塁打数が5位で、打力の不足にシーズン通して苦しんだ。攻撃に関する良いデータでは、盗塁が1位T、犠打が1位、四球が3位で、打てない不利を補うために戦略やチームプレーでしのいだことが数字にもはっきり表れていた。
だからこそ、今シーズンは「生まれ変わった阪神打線」が優勝争いの原動力になるという見方が広がっている。要素はいろいろあるが、なんといってもスーパールーキー・佐藤輝明(近大)の存在が大きい。オープン戦は堂々の本塁打王(6本)で、打率は8位、打点は3位Tと大暴れした(いずれも規定打席到達選手のみの順位)。開幕カードと同じ3月16日のヤクルト戦でオープン戦5号を放った翌日には、「日刊スポーツ」が「9戦5発はシーズン143試合換算なら79発ペース」とはやし立てるなど、虎党のみならず球界全体が佐藤フィーバーに沸いている。
その佐藤は、開幕2戦目のヤクルト戦で早速バックスクリーン直撃のホームランを放ち、大物ぶりをいかんなく発揮している。阪神元監督の安藤統男氏は、佐藤を「阪神では田淵幸一以来のホームランバッター」と評する。
「佐藤はスイングが力強いから、打球が上がって飛ぶよね。阪神のホームランバッターといえば掛布(雅之)や岡田(彰布)もいたけど、彼らは好打者であって本質的にはホームランバッターではない。特に掛布は、飛ばすためにいろいろ工夫をした努力家でした。それに比べて佐藤や田淵は、そんなこと考えず、そのための努力はしなくても遠くへ飛ばす能力を持っている。
佐藤はすでに基礎体力ができあがっているね。打撃練習ではポンポン飛ばしていたから、ゲームではどうかなと注目しましたが、いかなる場面でも自分のスイングの形を持っている。ヤクルト戦でホームランを打った時は、1打席目、2打席目に徹底した内角攻めをされて凡退したあとの打席でしっかり仕留めた。順応力もあるし、ボールをとらえるポイントが近いからインコースを苦にするタイプでもないね。
今年の阪神? もちろん優勝ですよ。佐藤か入ったことで周りの選手にも刺激を与えているし、若手が育ってチーム力がついてきたからね」