コロナ禍のなかで開かれる東京オリンピック・パラリンピックは、当初の計画から様々な面で変更を迫られている。海外からの観客受け入れを断念することで、経済的な損失は1兆6000億円になるとの試算もある。それ以外にも、期待していた役割や仕事を担うことができないケースが出てきそうだ。
「通訳ボランティア」の仕事がない!
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会前会長・森喜朗氏の女性蔑視発言による大量辞退も報じられたが、それでも東京五輪には多くのボランティアが参加する。そんな彼らの活躍の場も大きく制限されるとみられる。
「とくに影響が大きいのが通訳や会場での案内を担うボランティアでしょう。海外客が来ないのでは、その語学力を発揮できる場も少ない。
ちなみに8万人のボランティアのうち、約2300人が海外から訪れる。彼らの処遇もまだ決まっていない」(スポーツ紙五輪担当デスク)
夢と消えた「五輪で町おこし」
地方自治体も大きな痛手を被っている。大会前に各国の代表を迎える「事前キャンプ」のキャンセルが相次いでいる。
「カナダの卓球代表は長野県岡谷市、オーストラリアのスポーツクライミング代表は愛媛県西条市での事前キャンプをキャンセルした。どちらの自治体もゲストを迎え入れる準備を入念に進めていただけに落胆は大きいようです。
一方、宮城県栗原市(南アフリカ・ホッケー)と島根県奥出雲町(インド・ホッケー)は自治体側の判断で選手団の受け入れを断念した。国が示した感染対策を実現できないという理由からでした」(同前)
五輪の大きな魅力のひとつである“国際交流”も今回の五輪では形骸化しそうだ。
世論調査(毎日新聞・社会調査研究センター調べ・3月13日発表)では、東京五輪・パラリンピックを「中止すべき」と答えた人が32%、「再延期すべき」と答えた人が17%に上った。国民の半数が歓迎しない五輪は、得られる果実も限定的のようだ。
※週刊ポスト2021年4月2日号