新しい駅ができれば、その周辺もたちまちのうちに整備され、新しい街が生まれると想像するものだが、現実にはとてもゆっくりと整備はすすめられる。1986年に廃止された国鉄汐留駅が汐留シオサイトへ生まれ変わったのは2002年であるように、10年以上かかるのが普通だ。ライターの小川裕夫氏が、話題の高輪ゲートウェイ駅や仙台貨物ターミナルなどを例に、なぜ、新しい街づくりには時間がかかるのかをレポートする。
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半世紀ぶりの山手線新駅として注目を浴びた高輪ゲートウェイ駅開業から1年が経過した。開業時期が新型コロナウイルスの感染拡大と重なる不運などもあったが、それでも話題性は十分だった。2020年の開業は、あくまでも駅が供用を開始した節目に過ぎない。まちびらきは2024年を予定しており、JR東日本をはじめとした事業者は周辺開発に大きな期待を寄せていた。
しかし、開発予定エリアから高輪築堤という鉄道遺構が出土。これにより、周辺開発の先行きが不透明になりつつある。
我が国初の鉄道は、新橋(後の汐留)駅?横浜(現・桜木町)駅間で開業した。計画段階では、もっと内陸に線路を建設する予定だったが反対は強く、そのため海上に築堤を築き、その上に線路を敷設した。このほど出土した高輪築堤は、我が国の鉄道史の原点でもあり、近代化という視点でも貴重な遺跡でもある。それだけに、学者や研究者が全面的に保存を熱望することは自然な流れでもある。
しかし、当事者であるJR東日本から見れば話は異なる。コロナ禍で収益が悪化し、今後も人口減少で利用者減という危機がしのびよる。それだけに、駅前一等地という地の利を生かしてオフィスビル・商業地として大規模開発。その不動産収入を期待する。いくら歴史的に価値が高い高輪築堤といっても、それを保存したところで収益に結びつかない。そんな背に腹は代えられない事情がある。
高輪築堤は日本初ともいえる鉄道遺構だけあって、テレビ・新聞などから耳目を集める。しかし、あまり目立ってはいないが類似のケースは各地で起きている。
宮城県仙台市では、2012年から仙台貨物ターミナルの移転が議論されてきた。仙台貨物ターミナル駅は仙台駅の約2キロメートル東側にあるが、宮城県は同地を広域防災拠点として整備することを表明。
JR貨物も計画に賛意を示し、仙台駅から約6.7キロメートル北東の新天地へ移転することに協力を惜しまなかった。
ところが、貨物駅の移転予定地から埋蔵文化財が出土する。