米中両国の外交トップのハイレベル協議が3月中旬、米アラスカで行われ、双方が相手を激しく攻撃するなどの異例の応酬を展開した。しかし、中国のネットユーザーの関心は、そのような白熱した協議内容よりも、もっぱら中国人女性通訳に集まったようだ。「中国で最も美しい通訳」との声が出るなど、ネット上では彼女が通訳する表情などを収めた動画が数千万回も再生された。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」などが報じている。
この女性通訳は張京氏で、浙江省杭州市出身で36歳。2003年に杭州外国語学校を卒業し、北京の外交官養成の中国外交学院(大学)を卒業後の2007年に外務省に入省。
彼女が最初に注目されたのは2013年3月の全国人民代表大会(全人代=国会)の内外記者会見で通訳を務めたときだ。黒いスーツ姿で登場し、通訳をする姿が極めて冷静なことから「クールビューティー」「氷の美女」などと呼ばれた。
その後も着実に実績を重ねて、重要な国際会議で英語の通訳を務め、中国紙「中国婦女報」は彼女について「諸外国に中国のイメージを伝えるほどのモデル的存在」であり、「世界に中国の声を届ける中国外務省の最も有能な通訳」と評した。その技量を買われて、今回の米中会談で楊潔チ・共産党政治局員や王毅・外相という中国外交ツートップを前にしての重要な役回りを任された。楊氏は英国への留学経験もあり、米国大使を務めるなど英語はプロ級で、ときには通訳の誤訳を指摘するなど、通訳の間で恐れられている。
ハイレベル協議ではブリンケン米国務長官らが中国の人権問題や香港問題、軍事行動などを批判する演説を2分以上にわたって展開し、中国側の対応を批判。これに対して、中国の外交トップの楊氏が規定の2分を大幅に超過する15分間の長広舌を振るい、「米国は中国の人権問題を批判するが、米国では黒人の差別問題は解消されていない」などと高圧的な米批判を繰り広げた。
張氏は楊氏の発言終了後、「まず、私が通訳します」と断りを入れると、楊氏は「通訳のテストをしよう」と会場内の笑いを誘った。だが、張氏の完璧な通訳の内容に、米国のブリンケン氏が「通訳の給料を上げなければならないようだ」とのジョークを返した。
ネット上では「楊氏らをやりこめた毒舌のブリンケン氏も張氏の英語の通訳能力の高さを認めざるを得なかったのは痛快だ。今回の米中協議では、通訳の技能の高さで、中国側の勝利だったと言っても良いだろう」との声も出ている。