3月20日に発生した宮城県沖を震源とする最大震度5強の揺れは、首都圏にまで及んだ。2月13日の福島県沖地震(最大震度6強)以降、各地で大きな揺れが頻発しており、人々の不安は高まっている。
政府の地震調査研究推進本部の分析(2020年)によれば、今後30年以内にM7程度の首都直下型地震が起こる確率は約70%。政府の中央防災会議によれば、都心南部でM7.3クラスの直下地震が起きた場合、首都圏の死者数は最大で2万3000人にのぼるとされる。
そこで懸念されるのが、7月23日からの開催を目指している東京五輪への影響だ。東京女子大学名誉教授(災害リスク学)の広瀬弘忠氏が語る。
「新型コロナウイルスの影響で海外からの一般客の受け入れは断念したと発表されましたが、それでも各国の選手や大会関係者約数万人の来日が想定されています。
また国内の観客が有力視されている『50%上限』と仮定しても、大規模会場には数万人が集まります。五輪期間中に首都直下型地震が発生すれば想定を超える被害が出る可能性は高い」
加えて今回は、新型コロナの感染収束が見通せない中での開催となる。関西福祉大学教授(渡航医学)の勝田吉彰医師がいう。
「4月から始まる高齢者へのワクチン接種は7月末頃までかかると見られており、五輪開催時期にはまだ流行が続いていると考えられます。新型コロナのような強い感染症が蔓延している時期に大地震が発生した事例は過去にないため、もし起きれば混乱は避けられないでしょう」
首都直下型地震とコロナウイルスのパンデミック。五輪開催中の東京を2つが同時に直撃したら、どんな事態が待っているのか。
「自転車」「馬術」は急に止まれない
大会期間中は首都圏を中心に9都道府県42会場で各競技が開催される。
東京都の五輪招致活動の推進担当課長を務め、五輪会場でもある東京体育館の建設に関わった経験を持つ国士館大学客員教授の鈴木知幸氏によれば、競技会場自体が地震で倒壊する可能性は低いという。
「五輪で使用される公共施設は、M7クラスの大地震を想定した耐震化が採用条件になっている。新国立競技場はもちろん、東京体育館や日本武道館も建物が大きく破損するような事態は起きないと思います」