着ている服に火が燃え移った…すぐにとるべき行動は?(イラスト/大窪史乃)
首都直下地震で想定されている市街地火災の焼失被害は最大約41万2000棟、死者最大約1万6000人と推測されている(内閣府「首都直下地震の被害想定と対策について」(2013年12月公表)より)。大規模震災の場合、消防車が平時のようにすぐに駆けつけてくれる可能性は低く、地域住民が協力して消火活動をせざるを得なくなる。
そんな慣れない消火活動中、衣類に火が燃え移ったり、火災から逃げる際に、火の粉が飛んで来て衣類に引火したら……。慌てて走り回ったり、手ではたいて消そうとしてしまいそうだが、これは絶対にやってはいけないと、兵庫県立大学防災教育研究センター長の室崎益輝さんは言う。
「走ると風が起こりますし、手ではたくのはうちわであおいでいるのと同じで、いずれも火の勢いを強めてしまいます。着ている服に火がつく“着衣着火”は、軽度のやけどでは収まらず、全身にやけどを負うので、死亡事故になることも多いんです。全国で毎年約100人が着衣着火により命を落としています」(室崎さん・以下同)
着衣着火が恐ろしいのは、袖口など衣類の一部に引火しただけでも、一瞬のうちに燃え広がってしまう点だ。
「特に燃えやすいのが、綿・レーヨン・キュプラなどの素材。ネルシャツなど表面が起毛しているものや、洗濯を繰り返して毛羽立っているものは、表面に空気の層があるので、衣類に火がついた瞬間、炎が走るように広がる“表面フラッシュ現象”が起こる可能性が高く、非常に危険です。もしそうなれば、脱いでいる余裕などありません」
では、どう対処すべきか? 合言葉は『ストップ、ドロップ&ロール』だ。これはアメリカで広まった防災用語で、着衣着火の対処法として、子供たちにも指導されている。
「衣類に火がついたら止まって素早く地面に倒れます。火は上に向かって燃えるので、立ったままだと頭部や気道を熱傷する恐れがあるためです。そして、燃えている部分を地面に押し付けるようにして、左右に転がります。こうすることで、空気との接触面がなくなり、火を鎮められます」
もし近くに水場があったら、大量の水をかぶってもいい。
燃え上がった火を前に動揺しないよう、イメージトレーニングしておくことも大切だ。
取材・文/鳥居優美
※女性セブン2021年4月8日号