歩道を歩いて人とぶつかった女子中学生に、約790万円の賠償命令──そんな判決が3月15日、大分地裁で下された。
2017年9月、大分市の歩道で登校中の女子中学生とぶつかって転倒した怪我で後遺症が残ったとして、同市の80歳代女性が約1150万円の損害賠償を求めていた。
「中学生は前を歩いていた4人の生徒を追い抜こうとした際、対向の高齢女性と衝突。両手に野菜を持っていた女性は転んで腰の骨を折り、腰が曲がりにくくなるなどの障害が残った。
中学生側は『いきなり歩く速度を上げたり進路を変える危険な行為はしていない』と主張しましたが、歩道の幅は2.2メートルしかなく歩行者同士が衝突する危険があったとして、地裁は『追い抜く際に安全に配慮して歩く注意義務を怠った過失がある』と判断。女性の骨折は骨粗しょう症の影響もあるとして賠償額は減額されました」(全国紙司法担当記者)
中学生側の代理人弁護士は「今後の対応を協議する」としたが、歩道を歩いていただけの中学生には重すぎる賠償にも思える。弁護士の深澤諭史氏はこう解説する。
「損害賠償請求では、発生した損害が認められれば、それが故意か、不注意による過失かは基本的には関係がない。賠償額が790万円になったのは、後遺症が残り、治療費が高額だった可能性が高いと思われます。
事故の賠償額には年5%の利息が付きます(2020年施行の民法改正で原則3%に)。2017年に事故が起きているため790万円が元本であれば、実際には約948万円の損害賠償額になります」
日常生活で思わぬ損害を与えてしまうケースは少なくない。
「あまり報道されていないだけで、偶然の不幸が重なって事故になってしまい、損害賠償請求されるケースはよくあります。今回は中学生に損害賠償が請求されたように、損害を与えたのが未成年でも賠償金の支払いが命じられることはあります。民法ではだいたい12~13歳程度から責任能力が認められています」(同前)
法律的には“子供のやったことだから”では済まない世の中になっている。
※週刊ポスト2021年4月9日号