年を重ねれば、それだけ抱えるものも増えてくる。人生の中で得た資産も、思い出の品も、これまで築いた人間関係も、手放すとなると躊躇してしまう。“手ぶら人生”を実践した著名人が、その体験を明かした。
“商売道具”を整理した著名人がいる。元参院議員の筆坂秀世氏(73)はこう明かす。
「コロナのリスクがあって人混みが嫌だから、私は“東京”を捨てました。テレビ出演や講演などいろいろ仕事の話はあったけれど、すべて断わった。それでこの際ならと、スーツやワイシャツ、革靴も捨てたんだ。もう使わないからと捨ててみたら、気が楽になったよ。
私は議員年金の年数を満たしてないからもらってないけど、何の欲もないから、通常の年金生活で十分。今じゃ、スニーカーを履いて女房と近所を散歩するのが楽しみ。(住んでいる)埼玉は自然が多くて季節の花や小鳥とか見ると和む。可愛くて、癒やされるよ。東京の喧騒にいたら気づかなかったことに今は目がいくようになったね」
5年前に都知事を辞した舛添要一氏(72)も、「衣類」の整理を始めている。
「大臣や都知事をしている時は、公に出る仕事なので服装には気を配り、毎年、スーツは冬物と夏物を1着ずつくらい買っていました。スーツは襟の幅などの流行りがありますからね。都知事の時は、五輪関連で海外からのお客さんをもてなす機会も多かったので、“都知事は時代遅れの服を着てる”と思われたら、東京のイメージが悪くなると考えていました。
そういった昔着ていたスーツやシャツは何十着もありますが、無理にまとめて捨てたりはしていません。大事なのは新たに買い足さないこと。趣味の農作業や大掃除の時に、作業着として着古したワイシャツやカラーシャツを利用しています。そうして汚れたりボロボロになったらポンと捨てる。そうやって整理しています」
都知事を辞めてからは、外出することが減り、スーツを着る機会も少なくなったという。
「ちょっと外に出る時は、昔から持っているジャンパーなんかを羽織ればいい。たまにビシッとした格好をする必要がある時は、家に残っている昔のスーツやシャツでコーディネートすれば十分です。高齢になれば体型も大きく変わりませんしね。おかげでこの5年間、衣類の出費はほぼゼロです」(舛添氏)