中国が今後の5カ年計画(2021~2025年)の重要プロジェクトと位置付けているチベット自治区のヤルンツァンポ川の大規模水力発電プロジェクト建設について、専門家らが同川下流域のインドやネパールなどのヒマラヤ山脈の氷河が崩落して、周辺住民や家屋などに重大な被害が出る可能性がある、と警告していることが明らかになった。
今年2月にはヒマラヤ山脈山麓のインド・ウッタカランド州の川沿いで水力発電所の建設に従事していた作業員約190人がナンダ・デヴィ氷河の溶融水による急流に飲み込まれて、14人死亡、170人以上が行方不明になる大きな事故が発生している。ヤルンツァンポ川の水力発電プロジェクトが始まれば、大きな災害が起こりかねないことから、中国の開発に懸念の声が上がっている。
中国の経済政策を統括する中国国家発展改革委員会によると、ヤルンツァンポ川の大規模水力発電プロジェクトは年間3000億キロワット時(kWh)の発電量が見込まれる。世界最大の水力発電所である中国の三峡ダムが世界一を記録した2020年の年間発電量1030kWhの3倍に相当する。
ヤルンツァンポ川の上流域には大規模貯水池が10、中規模が11、小規模な貯水池は100あり、これらをすべて合わせて、大規模水力ダムを建設する計画だ。
しかし、ある専門家は、衛星写真で、中国、ネパール、インドの国境近くのヒマラヤ地域に存在する氷河を分析したところ、全部で3624の氷河を発見し、そのうち47は非常に危険であることがわかったという。
台湾中央研究院地球科学研究所の王中和研究院は米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」に対して、「これらの氷河が崩落すれば、下流地域で大規模な洪水を引き起こす可能性が非常に高い。大規模な水力発電プロジェクトは、その引き金になるかもしれない」と中国の大規模水力発電プロジェクトの危険性を警告している。