国内

なぜヤクザは「負のサービス産業」と呼ばれるのか

令和時代のヤクザ社会を追い続ける鈴木智彦氏

ネットカジノから地上げまで、ヤクザの生業は幅広い(写真は鈴木智彦氏)

 賭博は違法で、警察に徹底的に家宅捜索を繰り返されたり、賭博参加の客に迷惑を掛けたりするので、今、常設の賭場などはなくなりました。わずかにバカラ賭博などをやらせる闇カジノと、フィリピンの本物カジノと中継でつながっているなどと称するネットカジノがひっそり行われている程度です。

 負のサービス産業として、かつてヤクザに社会的な需要があったのは債権取り立て、地上げ、倒産整理などです。

 債権取り立ては、繁華街のクラブなどで客の何某がツケを溜め込んで払わない。取り立てたら、取り立てた額の半分をやるから、代わりに取り立てて、と頼まれるシノギです。

 現在、債権取り立ては弁護士に限り、ヤクザが手を出したらアウトなのですが、短時間で効果が出たのはむしろヤクザのほうだったはずです。ぷよぷよ体型の弁護士がやって来ても屁とも思わない踏み倒し常習の客がいます。彼らが怖がるのはむしろヤクザの暴力でしょう。

 地上げは地価が年々上昇していたころの話です。人が住んでいる土地を建物ごと買い上げ、住民に出ていってもらって、更地にすることを狙います。これも不動産業者が交渉してラチが明かないとき、ヤクザが依頼されて出張り、住民を脅しあげ、それでもダメなら糞尿を撒き、火をつけ、身柄をさらうなどの暴力を振るいます。それで出ていってもらうのです。

 倒産整理は倒産しそうな会社にいち早く乗り込み、少しの融資を餌に会社の資産を叩き売り、債権者会議を牛耳って自分だけ儲けるシノギですが、これは専門知識が必要なため倒産整理屋という業者が存在しました。彼らがヤクザの傘下に入ったから、倒産整理もヤクザのシノギになったわけです。

ヤクザが生き残るためには

 しかし、この手のシノギはすべて暴対法で中止命令が出され、二度繰り返すと逮捕・禁錮もあり得る犯罪になりました。おまけに何でもないふつうの商売がヤクザに限っては、暴力団の資金源になるという理由で警察の干渉を招き、結果的に正業もダメというのが現在です。

 では、ヤクザはどうしたらいいのでしょう。前記した通り、違法だけど、なんとかシノギになるのは覚醒剤ぐらいなものです。しかし、ヤクザ全員がシャブの密売をやれるほど、市場は大きくない。また特殊詐欺はもともと半グレが始めたシノギですが、ヤクザがそれを導入することがすでに始まっています。しかし、特殊詐欺の被害額も近年は減っている現実があります。

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