男子は長髪禁止、女子はポニーテール禁止、下着の色は白、自転車通学時はジャージに限る、など理不尽な校則を体験して大人になった人は多いだろう。だが、この「校則」と呼ばれているものはほとんど、生徒手帳に文章で記載された校則に含まれていないことが分かってきた。しかし、なぜかその手の出典不明な「校則」は全国各地の学校ではびこっている。ライターの森鷹久氏が、なぜ謎ルールが制定され校則と同じ扱いで守られているのか、背景をさぐった。
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「体操服の下に肌着を着用してはいけない」など、独自の意味不明な規則がある一部学校の実態が、少し前に話題になった。テレビには取材に応じた当該学校に通う子の親が登場し、その理不尽さを訴え、学校側や教育委員会などに説明を求めたいと話す様子なども放送された。
こうした問題が発覚すると、まず「悪者探し」が始まるのも常だが、規則を決めたはずの学校、そして教育委員会にその経緯を問うても、返ってくるのは要領を得ない、責任回避のような謝罪めいた言葉ばかり……。その無責任さに腹を立てた視聴者も少なくないだろうが、そこには学校側の知られざる苦悩、混乱があるようだ。
「私の学校にも、テレビや新聞で騒動を知った親御さんから何件か問い合わせが来ました。実はうちでも、体操服の下に肌着を着用してはいけない、という暗黙のルールがあったためです。さらにそのルールが女子生徒にしか課せられておらず、マスコミに知られたらまずいと、校長も教頭も慌てて対応していました」
副島聡美さん(仮名・20代)は、千葉県内の公立中学校教諭。この騒動が起こるまで「肌着禁止」について、学校の内外から表立って指摘されたことはなく、改めて学校規則を見返してみても、そのような記にも見当たらなかったと話す。
「肌着禁止について、汗をかいたら冷えるからとか、体を鍛えるため、なんて回答をした学校もあるようですが、うちの学校で規則が制定された理由は一切わかりません。いつ誰が決めたのか、全く記録に残っていないんです。先生達が個別にクラス向けの配布プリントで『お願い』をしていたことはあったと思いますが」(副島さん)
校則や規則ではないが「慣習」のようなものだったらしい。だからといって誰もが納得しているはずもなく、生徒や親から「なぜ」の声が上がらないわけでもなかった。しかし、謎ルールは受け継がれた。
「先生によって回答はまちまちですが、下着が透けて見えると良くないとか、寒さに耐える意味もある、と説明している方(先生)がいたのは知っています。それでも親御さんや生徒から重ねてのクレームが入ったこともなかったはずです。私は正直、ずっと違和感がありました」(副島さん)