日本国内の大学では圧倒的なブランド力を持つ「東京大学」。しかし、東大卒という優越感から、社会に出た後に成長の機会を逸したと振り返るのは、卒業後、財務省に入省した山口真由氏(ニューヨーク州弁護士。2002年入学、文I)だ。
「東大を卒業したことで“自分はダントツでできる人間だ”との優越感を持ってしまったのだと思います。その分、失敗をしてはいけないと思い込み、会議などで質問をせず、変な質問をした同期を冷笑するようになった。東大卒という過剰なプライドが生まれたうえに、失敗を恐れてチャレンジせず自分を成長させることができませんでした」
山口氏は、財務省を退職して日本の弁護士事務所に勤務した後、ハーバード大大学院に留学。そこで「失敗が許される」ことを学び、「東大の呪縛」を解くことができたという。
コロナ禍で渡航が難しくなっているが、数年前には東大合格者トップの開成から海外の大学に進学する生徒が20人を超えたことが話題となった。いまや“東大に行くより海外に行ったほうが幸せ”という考え方も広がりつつあるのだ。
国内最難関の入試を突破しても、東大卒を待ち受ける難関は多い。今後、社会で「東大卒」はどう扱われることになるのか。
「『東大王』でお馴染みの伊沢拓司さんら、クイズ番組で東大生がもてはやされることからもわかるように、世間一般ではまだ東大ブランドの価値は生きており、事務処理能力の高さが評価される局面もある。ただし今後は事務処理能力だけでなく、率先して考えて行動する思考能力と行動能力が備わっていないと、東大ブランドといえども、企業や周囲から評価されないでしょう」(大学ジャーナリスト・石渡嶺司氏)