現在放送中のNHK連続テレビ小説『おちょやん』。ヒロインの杉咲花(23才)が作品の顔として物語をけん引し、コロナ禍の朝を活気づけている。それに大きく貢献しているのが、杉咲の相手役を務める成田凌(27才)だ。SNSなどでは「まだ20代なのに、壮年男性の雰囲気を上手く醸し出している」といった声が多く見られ、評判は上々。成田凌の魅力について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説する。
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「朝ドラ」といえば、個々の俳優を通して、それぞれに扮する人物の“人生”を垣間見られるのが魅力の一つ。演じ手には、一人のキャラクターが歳を重ねることによって変化していくさまを表現する力が求められる。20代の成田が壮年期の天海一平を演じるのは簡単ではなさそうだが、さすがはここ数年で一気に名を上げてきた俳優なだけあり、違和感なく見事に演じている。
本作『おちょやん』は、昭和を代表する女優・浪花千栄子の生涯をモデルにしたもの。大阪の貧しい家に生まれたヒロイン・竹井千代(杉咲花)が、自分の居場所を“芝居の世界”に見出し、やがて「大阪のお母さん」とまで呼ばれる大女優へと成長していく姿が描かれている。成田が演じている一平は千代の夫であり、彼女が所属する「鶴亀家庭劇」の座長でもある。つまり千代の人生に多大な影響を与える、非常に重要な役どころだ。
成田が朝ドラに出演するのは、2017年下半期に放送された『わろてんか』に続いて今回が2度目。同作では、葵わかな(22才)演じるヒロインと、松坂桃李(32才)演じるその夫の息子役を務めていた。ヒロイン(主人公)の子ども役といえば、将来を嘱望される若手俳優に白羽の矢が立つことが多い。前作『エール』(2020年)では古川琴音(24才)がそのポジションを務めたが、現在は映画にドラマなど多くの作品に出演している。
実際、成田も『わろてんか』出演後は目覚ましい活躍を見せている。同作にて知名度を上げた後、主に映画を主戦場として力をつけてきたように思う。彼の代表作と呼べる作品は枚挙にいとまがない。日本映画界の黎明期を支えた“活動弁士”に扮した『カツベン!』(2019年)や、ミステリアスなゲイの青年を好演し切ない恋物語を展開させた『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020年)も記憶に新しく、主演として風変わりな予備校講師に扮した最新作『まともじゃないのは君も一緒』(2021年)など、立て続けに話題作に出演している。これらの作品を経て、成田は再び朝ドラの現場に舞い戻ってきたのだ。
朝ドラの子ども役がいかに大きな影響力を持つかは先に述べたが、主人公の相手役となれば話は違う。今作ではヒロインを支える形で作品を率いる立場だ。それなりに力を認められた者でなければ務まらないだろう。成田のこの数年の躍進ぶりが、今作の“ヒロインの相手役”という形に顕れているのだと思う。