ミャンマーと国境を接する中国南西部の雲南省瑞麗市当局は3月末、新型コロナウイルスに感染している市民やミャンマー人難民ら計9人が見つかったことなどから、約21万人の全市民がPCR検査を受けることと、今後1週間の外出禁止を命じたことを明らかにした。また、瑞麗市は三方の国境をミャンマーと接しているため、市への出入りを禁じる都市封鎖に踏み切った。
市当局によると、無症状感染者も22人いて、その大半がミャンマー人だという。瑞麗市は2月1日のミャンマー国軍によるクーデターを受け、ミャンマー人の宿泊禁止や隔離といった厳戒態勢を敷き、入国規制を強化していたことから、今回の国境封鎖は新型コロナウイルス感染を名目に、ミャンマー人難民の流入阻止を目的としているのではないかとの観測も流れている。
雲南省の交通の要衝である瑞麗市には、新型コロナウイルスの感染を恐れて避難を求めるラオスやミャンマー、ベトナムなどの不法移民が流入。中国当局はこれらの国々との4000kmの国境の監視を強化していた。
そのような中で起こったのが、ミャンマー国軍によるクーデターだ。これまで以上に国境監視を強めていたところ、新型コロナウイルス感染者の存在が明らかになった。
市当局は72時間以内にPCR検査で陰性だった者だけに瑞麗市を離れることを許可する一方、市内に入ろうとするすべての人々と車両に引き返すように求めている。
このため、市民は特別な理由がない限り、外出できず、スーパーマーケット、薬局、農業市場を除くすべての店は営業中止になった。また、各家庭で買い物係を1人だけに定め、出入りする際には、政府発行の証明書が必要となる。
今回の瑞麗市での感染拡大の原因は不明だが、地元メディアは「ミャンマー難民が感染源の可能性が強い」などと報じていた。ネット上では「瑞麗の封鎖措置は感染対策ではなくて、ミャンマー難民対策なのではないか」とのコメントもみられており、今回の措置は難民流入を阻止するのが目的との見方も出ている。
中国は巨大経済圏構想「一帯一路」の拠点であるミャンマーを外交・経済上の要衝と見なし、ミャンマー国軍記念日の式典に出席するなど軍政との関係も重視してきた。しかし、ミャンマー情勢の混乱が中国の治安悪化につながる事態は避けたい考えで、新型コロナ対策は国境封鎖の格好の口実となるのも確かだ。