この1年間で、視力に何らかの不調を感じする人が増えているという。三井メディカルクリニックの三井石根院長はこう話す。
「『コロナ禍の休校で自宅にいる生活が増え近視が進行した』と駆け込んでくる子どもさんが増えました。成人もIT機器使用の増加と視力の低下を感じる人の増加に相関関係が見られます」
目は、外から取り込んだ光を角膜と水晶体が屈折させて眼底の網膜に焦点を合わせることで見えるようになっている。網膜はいわば映画のスクリーンであり、焦点が合わないと映像がぼやけてしまう。網膜より手前に焦点が結ばれる状態が近視で、近くのものがはっきりと見える一方、遠くのものがぼやけて見える。
近視の多くは軸性近視と呼ばれるものに分類される。角膜から網膜までの距離である眼軸長が伸びて焦点が網膜まで届かなくなり、手前で像を結んでしまうことで起こる近視だ。逆に、網膜より奥に焦点が合ってしまうのが遠視で、遠くのものも近くのものも見えづらくなる。老眼は、加齢によって水晶体が固くなり、水晶体の厚みを変えピント調節を行なう毛様体筋の力が弱まることで起こる。その結果、遠視と同じように網膜より奥に焦点を結び、手元のものが見えにくくなる。
最悪失明も!近視・老眼の病的リスク
日本における失明にいたる原因は強度近視が5位とのデータがある。軸性近視は眼軸長が伸びることで引き起こされるが、強度近視になるまで伸びてしまうと、ものがゆがんで見えたり視野の中心が暗くなる近視性黄斑症や、視野が狭くなる緑内障などの合併症を招く要因にもなりかねない。強度近視は近視でない人に比べて、緑内障になるリスクが約3倍に高まる可能性も報告されている。
老眼とともに、水晶体が白く濁って視力が低下する白内障も進行する。自覚症状がなくても、見え方に少し不安が出てきたら、眼科に診てもらうことが重要だ。
取材・文/小野雅彦
※週刊ポスト2021年4月16・23日号