芸能

廃業した立川流の二ツ目による、独特の切り口で展開する新作落語

作家・ナツノカモ独自の切り口に感服

作家・ナツノカモ独自の切り口に感服(イラスト/三遊亭兼好)

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、廃業した立川春吾が作家・ナツノカモとなって生み出す新作落語についてお届けする。

 * * *
 立川春吾という二ツ目がいた。細身のイケメンで、古典の筋も良かったが、それ以上に独特な切り口で展開する新作落語に才を発揮、“談志の孫弟子世代”を代表する一人になるだろうと大いに期待していた。

 過去形で書いているのは、彼が廃業したからだ。

 春吾が休業したと知ったのは2015年の初頭だったと思う。「たぶんこのまま廃業だろう」と聞いて愕然とした。あまりに惜しい。彼が自らのツイッターで「9月に廃業しました」とアナウンスしたのは2015年末。多くを語らなかったが、やむにやまれぬ事情があったのだろう。

 彼と思いがけず再会したのは2019年11月の立川志の春独演会。開演前、着席した僕に「お久しぶりです」と声を掛けてくれた元・春吾に「今は何をやってるの?」と尋ねると「芝居をやったりしています」との答え。作家になったと聞いていた僕は「あ、そうなんだ」と軽く驚いたが、ネットで検索してみると、今の彼は“ナツノカモ”と名乗って劇団を主宰しているという。

 2020年2月、ナツノカモは亜紀書房のウェブマガジン「あき地」で自伝的私小説『着物を脱いだ渡り鳥』の連載を開始。そこに書かれていたのは、落語に対する強すぎるほど強い愛情だった。廃業したのに「落語とは何か」を考え続け、本当は落語をやりたくて仕方がないのに「やってはいけない」と考える自分との葛藤でもがき続ける元・春吾……。

 半年間、全14回の連載は、落語にこだわり続ける主人公が、周囲の人々に支えられながら試行錯誤していく中で、落語の技法を用いた新たな芸能としての“立体モノガタリ”なるひとり芝居を考案し、「落語のことを考え続けながら」新たな一歩を力強く踏み出して終わる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

第一子出産に向け準備を進める真美子さん
【ベビー誕生の大谷翔平・真美子さんに大きな試練】出産後のドジャースは遠征だらけ「真美子さんが孤独を感じ、すれ違いになる懸念」指摘する声
女性セブン
(撮影/田中麻以)
【高市早苗氏独占インタビュー】今だから明かせる自民党総裁選挙の裏側「ある派閥では決選投票で『男に入れろ』という指令が出ていたと聞いた」
週刊ポスト
『続・続・最後から二番目の恋』でW主演を務める中井貴一と小泉今日子
なぜ11年ぶり続編『続・続・最後から二番目の恋』は好発進できたのか 小泉今日子と中井貴一、月9ドラマ30年ぶりW主演の“因縁と信頼” 
NEWSポストセブン
タイと国境を接し、特殊詐欺の拠点があるとされるカンボジア北西部ポイペト。カンボジア、ミャンマー、タイ国境地帯に特殊詐欺の拠点が複数、あるとみられている(時事通信フォト)
《カンボジアで拘束》特殊詐欺Gの首謀者「関東連合元メンバー」が実質オーナーを務めていた日本食レストランの実態「詐欺Gのスタッフ向けの弁当販売で経営…」の証言
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《ベイビーが誕生した大谷翔平・真美子さんの“癒しの場所”が…》ハワイの25億円リゾート別荘が早くも“観光地化”する危機
NEWSポストセブン
戸郷翔征の不調の原因は?(時事通信フォト)
巨人・戸郷翔征がまさかの二軍落ち、大乱調の原因はどこにあるのか?「大瀬良式カットボール習得」「投球テンポの変化」の影響を指摘する声も
週刊ポスト
公然わいせつで摘発された大阪のストリップ「東洋ショー劇場」が営業再開(右・Instagramより)
《大阪万博・浄化作戦の裏で…》摘発されたストリップ「天満東洋ショー劇場」が“はいてないように見えるパンツ”で対策 地元は「ストリップは芸術。『劇場を守る会』結成」
NEWSポストセブン
なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
沢尻エリカ、安達祐実、鈴木保奈美、そして広末涼子…いろいろなことがあっても、なんだかんだ言って「透明感」がある女優たち
女性セブン
同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン