〈感染 男性不妊の原因に?〉、〈精子減報告 見えぬ仕組み〉──。こんなショッキングな見出しが躍ったのは、3月28日付の朝日新聞朝刊だった。記事では、新型コロナウイルスに感染後、精子が減ったという報告が海外で相次いでいると紹介。
イタリアでは、新型コロナから回復した43人のうち、4分の1にあたる11人が無精子症や精子が少ない乏精子症だったという論文が発表され、感染者と健康な非感染者の精液を比較したドイツの研究でも、感染者は精子に悪影響を与える炎症や酸化ストレスを示す数値が有意に高かったとしている。
これまで新型コロナには味覚障害や抜け毛など様々な症状が指摘されてきたが、この新情報が事実なら、男性にとって新たな心配が増えることになる。川崎医科大学附属病院長で、泌尿器科が専門の永井敦医師が言う。
「各国で同様の論文が出ており、その内容はある程度信頼できるものと考えられます。
感染症で精巣がダメージを受けるシステムは大きく分けて2つあります。インフルエンザのように長く続く高熱で精巣がダメージを受ける場合と、おたふくかぜのようにウイルスが精巣炎の合併症を起こすものです。前者の場合は通常2~3か月で回復する一過性のものですが、もし後者の場合、精子の生産が元に戻らない可能性がある。中国・武漢からの報告では精巣炎と思われる陰嚢の違和感を訴えた人もおり、安心はできません」
精子減少だけでなく、勃起障害につながる懸念も否定できない。
「精巣内の生殖細胞の中には精子を作る精原細胞の他に、男性ホルモンのテストステロンを出すライディッヒ細胞もある。この細胞に障害が起きると、勃起障害や性欲減退が生じる可能性がある。私が確認した論文の中にはコロナ感染でテストステロンの極端な減少を示すデータもありました」(同前)
※週刊ポスト2021年4月16・23日号