読み書き・計算のほか、生きるうえで必要な知識が詰め込まれた「教科書」。そんな“人生の指針”ともいえる教科書が、昭和から平成、令和にかけて驚くほど変わっていた──。
「発端は、編集スタッフが子供との会話のなかで“ん?”と思ったことでした。それで、親世代の教科書と子供の教科書を比べてみたら、大きく変わっていて驚きました」
そう話すのは、『いつの間に?!ココまで変わった学校の教科書』(成美堂出版刊)を編集した、コンデックス情報研究所の担当者。
「特に社会や理科は近年の研究が進んだことで、だいぶ変わっているように思います。また教科書自体も大きくなり、フルカラーのものや視覚的に訴えるものも増えていて、学習も楽しそうです」(担当者)
教科書が変わるタイミングは4年に1度。新しい学説を採用するかどうかは出版社によって異なるが、文科省の学習指導要領の改訂に合わせ、4年に1度の改訂および12年に1度の大改訂が行われている。現行の教科書は2020年の大改訂にのっとったものだ。
教育ジャーナリストでマザークエスト代表の中曽根陽子さんは、教科書からもうかがい知れる日本の教育方針の変遷を解説してくれた。
「戦後の日本では、高度経済成長を支え、効率よく働いてくれるような人を求めていたので、ある程度の知識を一斉に身につける詰め込み式教育が行われてきました。その後、学習量を減らして自ら考える力をつけようとする“ゆとり”教育が行われたり、やっぱり学力は必要だと学習量を増やす“脱ゆとり”教育が行われたりしました。2020年の教育改革では、教科書の知識を丸暗記するのではなく、何を調べればその情報が出てくるかという発想力や、多様化する価値観を考える思考力が重要視されています」
たしかにいまの教科書には、『解体新書』の解説に「当時の解剖は差別された人々が行いました」という記述があるなど、1つの史実を多角的に考えられるような内容になっている。そんな、昭和世代が読んでも考えさせられる令和の教科書から、驚きの新常識を紹介する。
グローバル時代に合わせ、現地よみを導入「リンカーン」は「リンカン」に
旧:「エイブラハム・リンカーン」
新:「エイブラハム・リンカン」
文科省が定める外来語の表記では、現在も「リンカーン」になるが、グローバル化が進む現代では、現地読み(英語の発音記号)に近い「リンカン」が導入されている。