今年3月、福岡県で5才の男児が餓死する事件が発生した。逮捕されたのは、その母親とママ友。母親は、そのママ友に洗脳されており、離婚に追い込まれたほか、生活保護費もママ友に渡していたという──。
ママ友とのコミュニケーションは簡単ではない。周囲のママ友たちを自分の傘下に置きたがる“ボスママ”タイプもいれば、そのボスママに従うタイプもいる。そして、ママ友同士のパワーバランスが崩れると、トラブルに発展することが多い。
さらに、ママ友との付き合いの裏側には“子供”という存在が絶対にいる。本来であればコミュニケーションを取ることもなかったはずの人同士が、“子供のため”ということで、交流するケースが多い。
その“わが子への思い”がある点で、ママ友との付き合いはほかの人間関係とは一線を画した難しさがある。嫌いだから、苦手だからと安易に関係を断ち切れないのだ。
「ママ友とは、子供を介した特殊な人間関係のため、“もし私がママ友との関係を切ったら、子供がいじめられるかも”などと思ってがまんをしがちです。この状況を防ぐには、親は子供ではなく、“私はどう思うか”を優先して考えて。子供や他者ではなく自分に関心を向けることが大切です」
と、心理カウンセラーの石原加受子さんは言う。たとえば、ママ友同士でカフェを訪れ、注文を決めるときは、自分が飲みたいものを選ぼう。リーダーシップをとるボスママがコーヒーを頼めば、「じゃあ、私も同じものを」と答える人は多いが、なるべくそうしないこと。こういった細かいところから、“自分の意見を言う癖”をつけておけば、特に発言などをしなくても、「この人は自分の意見を持っている」と認識され、支配の対象になりにくくなるという。
しかし、自分の意見がわからない、という人もいる。
「そういう人はまず、自分の感情と向き合ってください。相手に不快なことをされたら“許せる・まあ許せる・許せない”の3つに分類します。自分の許容範囲が明確になれば、“自分軸”で考えられるようになります」(日本アンガーマネジメント協会コンサルタント・小尻美奈さん)
自分に“軸”を据えられれば、自分の意見もわかるようになり、それを相手に伝えられれば、人間関係はよくなっていくという。
ママ友との関係をさらに円滑にするためには、友達という意識を持たないことも大切だという。
「ママ友は、友達という名こそつきますが、あくまで“子供を介した関係”と、わきまえてつきあった方が気が楽になると思います」(石原さん)
子供が幼いうちだけの期間限定でつきあう、知り合い以上・友達未満の関係なのだ。
「ママ友関係がこじれ、そこから離れたとしても、実はそれほど大きな問題は起こらない、ということも覚えておくといいですよ」(石原さん)
関係を切ったことで育児に関する口コミ情報が入ってこなくなったとしても、インターネットなどで調べればいい。子供が友達と遊べなくなるかもしれないと不安かもしれないが、子供は意外とたくましく、親たちの関係にかかわらず、遊びたければ遊ぶものだし、新たな友達をつくるきっかけになるかもしれない。どんなに小さくても子供は自分とは別の人間だということを念頭に、親は自分を確立させるべきなのだ。親の心に余裕がないと、子供をきちんと守れないのだから。
取材・文/前川亜紀
※女性セブン2021年4月22日号