人生の後半戦の正念場のひとつが「親の死」だ。父や母が亡くなった後、悲しむ間もなく、待ち受けるのが「おひとりさま」になった親を巡る問題である。父の死後、「女は強し」を肌で感じたと語るのは、関西大学名誉教授の宮本勝浩氏(76)だ。
「親父が亡くなった後も母は雑貨屋をひとりで切り盛りして89歳まで働き、96歳の今も元気です。女性は食事の支度も自分でできるし、近所付き合いも多い。母は胃がんの手術をした時だけ我が家で暮らしたが、2~3か月して元気になると、ひとりで生活したいと田舎に戻っていきました。子供の家だと気も遣うし、近所には知らない人ばかりで面白くなかったみたいです」
家事をしていなかった男性はそうはいかない。都内の40代男性が語る。
「母が亡くなって、父はみるみる体力がなくなっていった。家に閉じこもり、外出に誘っても『身体がキツイ』と動こうとしなかった。一日中、黙ってテレビを見る生活が半年続き、母を追うように息を引き取りました」
都内の50代会社員もため息交じりに語る。
「母の死後、残された78歳の父は料理は全くせず、お湯を沸かすぐらい。それも火を使うと危ないので兄弟でお金を出し合い、台所をオール電化にリフォームしました。ところが父は母の死とともに生きる希望をなくしたようで、食事が喉を通らなくなり、リフォームした台所もほとんど使わず半年ほどで亡くなりました」
淑徳大学社会福祉学科教授の結城康博氏が話す。
「女性は夫が死んでも女同士のコミュニティで元気になる例が多い。注意すべきは妻に先立たれた男性で、特に老夫婦ふたりで生活していた場合、それまで助け合っていた買い物や家事などをこなせなくなり、生活のサポートが必要になることがよくあります」