またも政治不信が高まる出来事だった。今年2月に「週刊文春」が報じた、菅義偉総理の長男・正剛氏が総務省から許認可を受ける放送事業会社「東北新社」の部長として、総務省官僚らに高額接待をしていた問題。総務省幹部11人が国家公務員倫理規程に違反したとして懲戒などの処分を受け、東北新社は正剛氏を更迭、社長が辞任した。
さらに、東北新社がかねて外資規制に違反していた事実も発覚。子会社が運営する有料チャンネルの衛星放送事業認定が、5月1日に取り消されることが決まったが、正剛氏から接待を受けていた総務省が違反を知った上で黙認していた可能性も指摘されており、今後も調査が進められていく。
「正剛さんは、中途入社ながら異例のスピード出世で東北新社本体の統括部長、子会社の衛星放送事業者の取締役に昇進していきました。その背景に、元総務大臣で“電波のドン”と言われた菅総理の“七光”を指摘する声があるのは事実です。
実は、総理の親族は彼だけじゃありません。安倍晋三元総理の親族も働いています。厳密には奥様の昭恵さんの親族になります」(東北新社関係者)
Aさんとしよう。安倍首相在任中の2018年に東北新社に入社したAさんは、問題を起こした正剛氏とはまったく違った評価を受けているようだ。
「コミュニケーション能力が高く、いい意味で“政治家の親族”といった雰囲気を全く感じさせない。現在は映画の版権に関わる業務を担当していて、とても勉強熱心な方です」(別の東北新社関係者)
社内ではAさんが昭恵さんの親族であることは周知の事実のようで、本人も隠していないという。
「昭恵さんと親密かといえば、そうではなさそうです。昭恵さんとはSNSではつながっているけど、頻繁に会う間柄ではないとか。昭恵さんが経営している居酒屋の『UZU』にも、行ったことがないと話していました」(Aさんの知人)
東北新社が昭恵さんの親族だと知っていて採用したかは定かではないが、広告、電波、放送といったメディア企業に、政界関係者の親族が就職しているケースが少なくない。実際に、東北新社と同じく放送事業者であるテレビ局には、以前から政治家の親族が多く入社していた。例えばフジテレビには加藤勝信官房長官の長女や安倍元首相の弟である岸信夫防衛相の長男(すでに退社)が、TBSには田村憲久厚労相の娘・田村真子アナがいることが報じられている。
「親族に政治家がいるというだけで入社できるほどテレビ局の採用は甘くない。基本的には人物本位で採用されていて、優秀だから入社し、活躍していると言えます。一方で、組織としてのテレビ局は、電波行政を総務省に握られているのも事実。電波行政が不利にならないよう、政治家の親族の社員には、政界や官界とのパイプ役となることが期待されている面もある」(政治ジャーナリスト)