田中邦衛(享年88)が亡くなり、多くの芸能関係者から追悼の辞が寄せられているが、なかでも特別な思いで悼んでいるのが女優の児島美ゆきだ。田中の代表作『北の国から』では、田中演じる黒板五郎と恋仲になるホステス「こごみ」を演じた児島は、私生活では高倉健と交際していたことがある。実は、その高倉との仲を取り持ったのが田中だったという。昭和を代表する2人の大スターとの「恋」と別れを、改めて聞いた。
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4月2日の夕方、あの時は珍しく自宅で晩ご飯を食べていました。すると仲のいい編集者さんからLINEで、「田中邦衛さん亡くなったよ。大丈夫?」と連絡を受けたのです。ほとんど同時にニュースでも大きく取り上げられました。
そのあと女優の友達から、「クニさん亡くなっちゃった……なんで死んじゃったのぉ」と泣きながら電話がかかってきたんです。あんまり泣くので私もこみ上げてきて、2人で泣いてしまいました。彼女も『北の国から』に出演していて、その時は現場でものすごくダメ出しされて落ち込んでいたんです。もちろん今ではそのダメ出しの理由がわかりますが、初めて『北の国から』に参加した私には、「そこまで言わなくても……」と思ってしまうくらいに彼女は絞られていました。
そんなときクニさんは、いつも彼女の背中をポンポンと叩いて、「おーい、元気出せよ」「大丈夫だよ」と励ましていました。誰に対してもそういう人でした。だから、「クニさんのおかげですごく救われたのよ」と彼女が電話口で泣くのを聞いて、「本当にあんないい人はいないわね」と、私も涙がこぼれました。
クニさんがそういう人だったから、純(吉岡秀隆)と蛍(中嶋朋子)も委縮せずに伸び伸び芝居ができた。あんないい芝居、普通の現場ではできませんよ。秀ちゃんは天才肌だったけれど、特に朋子ちゃんの場合はクニさんの温かい思いやりに助けられていたと思います。
『北の国から』の現場では、クニさんは本当に「隣のおっちゃん」みたいな感じで、五郎の格好のまま富良野の町に出かけていくんです。スタッフがハラハラするのをよそに、あのニット帽を「どこそこのお店に忘れてきた」とかね。あれだけ何十年も第一線で活躍していた人なのに、地元の人たちにも決して威張るところがなくて、いつも誰に対しても自然体なんです。だから私もそんなクニさんが大好きでした。