3月25日にスタートした東京五輪の聖火リレー。連日聖火ランナーの姿がテレビで報じられているが、それは全体の一面のみを切り取ったものに過ぎない。実際に沿道に行ってみると、目に入ってくるのはコカ・コーラやトヨタ自動車、日本生命、NTTグループなど、スポンサー企業名が大書された改造車両の大行列だ。
赤や青の派手な色に塗装し、「ゆず」や「EXILE」などの曲を大音量で響かせ、荷台の上ではDJがマイクを使って「踊って楽しみましょう!!」などと叫んでいる。多い時は約30台の車列が続く。
主役のはずのランナーは最後列を巨大な車に隠れるように走る。車列が現われてからランナーが来るまで10分以上。沿道にいた男性は、「スポンサーの車を見に来たようなもんだ」とこぼしていた。
写真は、和歌山県の紀の川コースだ。鳥のさえずりが聞こえるのどかな山間部を、大音量のスポンサー車が大勢のスタッフを引き連れ行進する。次走を務める聖火ランナーは手持ち無沙汰に車列を見送っていた。
しかしこの構図は新聞・テレビでは報じられることはなく、取り上げるのは決まって著名人ランナーの笑顔ばかり。キー局と関係の強い大新聞もまた、東京五輪のスポンサーに名を連ねているからだろう。
東京五輪公式サイトによれば、聖火リレーは〈きたるオリンピックへの関心と期待を呼び起こす役目〉があるとする。しかし“スポンサー・ファースト”のこのリレーが、本当にその役目を果たしているだろうか。
撮影/WEST
※週刊ポスト2021年4月30日号