刑事ドラマの金字塔『太陽にほえろ!』(日本テレビ・1972年~)でマカロニ役を演じた萩原健一と、1年で殉職したマカロニの後を継いだジーパン役の松田優作。その後、2人は「若者のカリスマ」として、何かと比較される存在となった。昭和の時代を熱く彩ったライバル秘話を振り返る。
『太陽にほえろ!』のプロデューサー、岡田晋吉氏によれば、松田は萩原を強烈に意識していたという。
「年齢は優作がひとつ年上ですが、すでにザ・テンプターズのボーカリストとして名声のあったショーケンと違い、優作は無名の役者。切羽詰まった思いと、役者としてのプライドから現場でも『新人扱いはやめてくれ』とよく怒っていました。最後は優作のほうから『ショーケンが1年で辞めたなら、僕も1年で辞めたい』と言ってきた」(岡田氏)
「なんじゃあ、こりゃあ」というジーパンの殉職シーンは鮮烈で、2人の後『太陽にほえろ!』では刑事が殉職するのがお決まりに。実は殉職というアイデアは、ショーケンからの提案だった。
「ショーケンはアドリブで吸っているタバコを道路にポンと捨てたり、ツバを吐いたりするのだが、夜8時台のドラマではそんなシーンは描けない。でもショーケンにはタバコを投げ捨てるところまでが俺の演技だという思いがあって、『悔しさみたいなものが、落ちたタバコにはあるんだ』と主張していた。そういうズレもあって番組を降りたかったのでしょう。降板後、視聴率に貢献したご褒美として、『好きにやっていいよ』と企画したのが、夜10時台の『傷だらけの天使』(日テレ・1974年~)でした。
次々と演技の常識を破るショーケンを意識しないわけにはいかないでしょう。優作の『探偵物語』(日テレ・1979年~)は、自分も『傷だらけの天使』みたいな作品を作りたいという思いが反映された作品です」(同前)
2人と共演経験のあるホーン・ユキは役者としての違いをこう語る。
「萩原さんは感性でお芝居をする俳優。一方の優作さんは隅々まで細かい計算をして、視聴者にはアドリブに見えるようにするなど、演技を考え抜く俳優でした。『探偵物語』で私が下着になるシーンでは、私が冷えないように『早くしろよ』と言ってくれるなど、スタッフや共演者に細かい気遣いをしてくれた」