大手アパレル企業と業界の健康保険組合の間で、脱退をめぐる対立が起きている。新型コロナウイルスの影響もあって各業界の健保では保険料率の値上げや財政難などの問題が発生しており、他の健保の加入者にとっても注目すべき事例と言えそうだ。
今年4月には、大阪で衣類製造関連に勤める約2400人が加入する「大阪既製服健康保険組合」が、コロナによる保険料収入の減少で解散に追い込まれた。加入者は、国が運営する「協会けんぽ」(全国健康保険協会)に移ることになった。
病気やケガに備える健康保険制度は、自営業者などが中心となって加入する「国民健康保険」、中小企業の従業員が多く加入する「協会けんぽ」、大企業や同じ業界の企業で結成する「健康保険組合(以下、健保組合)」に分かれている。
健保組合の財源は被保険者(加入者)が収める保険料で、給料の10%前後。半分は会社が負担するため、実際に加入者個人が払う金額は5%程度。少なくない金額だが、それも給与からの天引きなので、あまり気に留めることもなかったかもしれない。
健保組合の財政が近年、悪化の一途と報じられているのは、「コロナ不況」だけが原因ではない。
健保組合は保険料を3つの使途に充てている。1つは加入者が医療サービスを利用した際に、医療費を負担する保険給付。2つ目は健康診断や生活習慣病予防、保養所の運営など組合独自の保険事業。そして3つ目が、国保などへの後期高齢者医療費への拠出金だ。急速な超高齢化が社会問題になっている通り、この高齢者医療費の拠出金は年々増加しており、過去の積立金を取り崩す、いわゆる「赤字健保」が大量に出てきている。
その結果、各健保組合では「保険料率アップ」が相次いでいる。このままでは健保組合が維持できないので、給与から天引きされる保険料の引き上げもやむなし、というわけだ。