韓国・文在寅政権が“死に体”と化しつつある。4月7日のソウル・釜山市長補欠選挙で与党が大敗、政権支持率も33.4%と発足以来最低を記録し、「もはや国民の関心はポスト文へと向かっている」(韓国人ジャーナリスト)という。来年3月に予定される次期大統領選が早くも動き始めた。
現在、世論調査で次期大統領候補のトップに立つのが、李在明(イジェミョン)・京畿道知事である。国政経験のない李氏は京畿道独自のコロナ支援金を支給するなどして注目を集め、さらにベーシックインカム(最低所得保障)の導入を掲げたことから、特に若年層の支持を得ている。
この李氏のことを、本誌・週刊ポストは5年前に〈「朴槿恵は日本のスパイ」と煽る“韓国のトランプ”登場〉(2016年12月2日号)という記事で取り上げている。朴槿恵・前大統領が日韓のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)に仮署名したことを李氏が痛烈批判。「我々を侵略し独島(竹島の韓国名)への挑発を続けている事実上の敵国である日本に軍事情報を無制限に提供するこの協定を締結するなら、朴槿恵は大統領ではなく日本のスパイだ」とフェイスブックに書き込んだところ、ネットユーザーからの熱烈な支持を集め、「韓国版トランプ」として注目されているという内容だった。
あれから5年、李氏は有力な大統領候補にまで昇りつめたのだ。武藤正敏・元駐韓大使はその人物像をこう見る。
「李氏はトランプが共和党の異端であるのと同じく、与党内野党の立場として支持を得ている。反日発言は文氏のような思想信条ではなく、ポピュリズムに従っているだけですが、今後、大統領選の候補者選びが混沌としてきた場合、さらに反日色を強めていくこともあり得るでしょう」
3月31日には日本の教科書に竹島が「日本固有の領土」だと記載されることをめぐって、「日本が過去を否定し、歴史を歪曲して、自ら孤立を招いた場合、間もなく後進国に転落することになるだろう」とフェイスブックに書き込み、またもやネット上で熱狂的支持を集めた。
「韓国版トランプ」の躍進は日韓関係にどんな影響を及ぼすのか。
※週刊ポスト2021年4月30日号