中国政府が新疆ウイグル自治区で100万人以上のウイグル人を強制収容所に送り、強制労働などの弾圧を続けている人権問題は、日本を代表する企業にも影響を及ぼしている。
ファーストリテイリング(ユニクロ)の柳井正会長は、4月8日の記者会見でウイグル問題について問われると、「人権問題というより政治問題であり、われわれは常に政治的に中立だ」と表明。新疆産の綿を使っているかどうかについても「ノーコメント」とした。
昨年9月、豪シンクタンク「豪戦略政策研究所」がウイグル人の強制労働に関する報告書を公開した。強制労働との関与が疑われる企業としてアップル、BMW、サムスン、フォルクスワーゲンなどの世界的企業のほか、日本からは前述のユニクロ、無印良品、しまむら、パナソニック、ソニー、日立製作所、TDK、京セラ、三菱電機、シャープ、任天堂など、14社が名を連ねていた。
日本ウイグル協会らがこの14社に対して質問書を送ったところ、多くの企業が「強制労働の問題は確認できなかった」と回答した。
日本企業が中国に対して及び腰になる背景について、経済ジャーナリストの磯山友幸氏が指摘する。
「2020年の対米輸出額は前年比17%減の約12兆円であるのに対し、中国への輸出額は2.7%増の約15兆円で最大の輸出相手国となっています。輸出の面だけでなく、日本企業は生産面でも中国に多数の工場・拠点を置いているため簡単に批判に回ることはできない」
ユニクロの場合は直接的な問題を抱えている。雑誌『経済界』編集局長の関慎夫氏が言う。
「柳井会長は使用について会見で明言しませんでしたが、ユニクロは製品の原料として新疆産のコットンを過去に使用していた。高品質で安価な綿は、大量生産ビジネスモデルのユニクロにとって“生命線”と言えるため、ウイグル問題への対応は自らの商売を左右しかねない」
こうした対中依存の状況は近年、さらに強まってきているという。
「ユニクロは中華圏の売り上げがすでに日本国内を上回っています。パナソニックは中国での売り上げを1兆円にすることを具体的な目標にしていますし、海賊版が横行する中国とは距離を取っていた任天堂でさえ、2019年末から中国で主力商品の『ニンテンドースイッチ』を売り始めた。どの日本企業も中国市場を無視できない現実がある」(同前)