北朝鮮の首都・平壌に居住していた朝鮮人民軍の元将校の30家族、約100人が当局非公認の自由市場で商売をしていたなどとして注意を受けた際に、「退役後、何の補償もなくなった。朝鮮労働党がだらしないからだ」などと公然と不平不満を口にした。これが問題視され、元将校らに対する平壌に居住するための特別許可が取り消され、平壌から地方に追い出されていたことが明らかになった。
北朝鮮では平壌に居住できるのは党や軍、政府幹部、要職経験者らとその家族が優先されている。しかし、このほど退役軍人の素行調査が行われ、「不適切な言動」を行った30家族が追放され、農村の強制労働改造所送りになったとみられる。北朝鮮ではこのところの財政難で、特権階級であるはずの軍の退役将校にも優遇措置をとれないほどの状況となっているようだ。
ことの発端は今年1月、金正恩党総書記の最側近で、党政治局常務委員兼党中央委員会組織担当書記に就任した趙甬元(チョ・ヨンウォン)氏が党大会にて、自身の最初の重要プロジェクトとして、「平壌市を革命的な首都の地位にふさわしい都市」に改造すると宣言し、「平壌市内の不法居住者や当局非公認の自由市場の現状を調べるよう」指示したことだった。
市当局は調査員として退役軍人数十人を採用。彼らは特別待遇を受けているはずの退役将校やその家族が自由市場で不法に商売を行っていることを発見し、注意した。ところが、現役時代の階級は退役将校の方が上だったことから、調査員の指示に従わず、さらに「金正日時代の『軍事第一主義』の時代から比べると、政府の退役将校の扱いが悪化している」と公然と不平を口にした。
退役将校たちは、「軍事第一主義時代には退役した将校はより良い仕事、新しい家、手厚い配給と経済的な補償があり、優遇措置を受けたが、いまは党がだらしないから、まったく何もない。だから、我々は恥を忍んで、自由市場で商売をしなければならないのだ」と激しく党・政府批判を展開した。
これらの言動は調査員から党指導部に報告され、30人の元将校とその家族の平壌追放が即座に決定された。
北朝鮮と国境を接する中国吉林省の地元メディアによると、これらの退役将校のなかには、平壌追放に頑強に抵抗した者もいたが、すべての財産を剥奪されて、犯罪者のように地方の農村に送り込まれており、このような措置に、平壌在住の他の退役軍人の間からも「あまりにも無慈悲だ」などとの批判が出ているという