大企業では2020年の6月1日から、中小企業でも2022年4月1日から「改正労働施策総合推進法(通称・パワハラ防止法)」が施行される。法で規制しなければならないほど、パワハラであふれている日本社会だが、なかにはパワハラ上司を見事に成敗したケースもある。44才の会社員の職場での仕返しエピソードを紹介する。
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転職先の部長が豪語する、“出世の3か条”がくだらないんです。それは、「部下に責任を取らせろ」「同僚の足を引っ張れ」「上司には媚びろ」──。
歓迎会でこの話を部長本人から聞いたときは、(笑えない冗談だな)と思ったのですが、「おれはこの法則で出世した」って自慢気に語っていて……。まさか本当に実践していたとは思いませんでした。
私も早々に、この法則でやられました。それは、会議の資料作成を頼まれたときのこと。どうやら、会議の趣旨と違ったようで、途中で私が呼び出されたんです。そして役員の前で、
「これを作ったのはお前だよな。なんでおれの説明した通りにまとめなかったんだ?」
などとまくし立てるように叱責。でもその資料作成時は、部長からなんの説明もなく、データだけ渡されたんです。説明を求めても、
「おれは忙しいからさ、適当にうまいことまとめておいて」
の一点張り。そもそも私が担当するプロジェクトじゃないので、わかるわけがないんです。
こういうことは、部署の全員がされており、皆うんざりしていました。そこで皆で話し合い、「証拠作戦」を決行。部長が私たちの誰かに命令をするときは、必ず誰かが会話を録音することに。そして先日、その録音が役に立つ機会がやってきました。中堅の男性社員に、
「なんでおれの言う通り発注しなかったんだ。お前のせいだぞ。上司にはどう説明する?」
と、いつものごとく責任をなすりつけていた部長を、部下全員で素早く取り囲み、録音しておいた会話を流しました。
「部長はこのときにこうおっしゃったので、そのまま発注しました。違うのではないかと提案もしましたが、合っているとハッキリおっしゃいましたよね。皆も聞いています。それでも異論があるなら、この録音をもとに、私たちで先方と上司にご説明いたしますが……」
と反論。これにはさすがの部長も絶句。それからはしばらくおとなしくしていましたが、2か月もたたないうちに、部長は営業損失がかさんで左遷されることに。部下になすりつけてきた失敗が、全部自分に“倍返しで”戻ってきたわけです。嫌なヤツって、自滅していくんですね。
取材・文/前川亜紀
※女性セブン2021年4月29日号