芸能

コロナ禍の劇団四季 がらんどうの稽古場と50億円損失からの逆襲

『劇団四季 The Bridge ~歌の架け橋~』の稽古風景。中央は俳優の笠松哲朗さん

『劇団四季 The Bridge ~歌の架け橋~』の稽古風景。中央は俳優の笠松哲朗さん

「今日、私たちは劇場で逢いました。夢は眠りの中だけにあるわけじゃない。劇場でも大きくふくらむ」──赤川次郎原作のミュージカル『夢から醒めた夢』のせりふを朗々と語るのは、1982年から劇団四季に在籍するベテラン俳優、味方(あじかた)隆司さん。

 4月16日、劇団四季の新作『劇団四季 The Bridge ~歌の架け橋~』の全国公演が開幕した。『キャッツ』『ライオンキング』などの人気作からオリジナルミュージカルまで、四季レパートリー作品の珠玉の楽曲を用いてつくられた、新しいショーだ。冒頭の『夢から醒めた夢』のせりふやナンバーも魅力の1つになっている。

 マスクをつけた観客は、幕が上がると無言のまま、割れんばかりの拍手を送る。軽快なボディーパーカッションやタップダンスに自然と手拍子が沸き起こり、それに呼応して俳優たちも輝きを増していく。観客はアクロバティックなダンスに息をのみ、圧倒的な歌唱力に涙をこぼす人もいた。しかし実は、この全国公演は、半年前にスタートしているはずだった。

がらんどうの稽古場と50億円の損失

『劇団四季 The Bridge ~歌の架け橋~』は、昨年7月に劇団四季の新劇場、JR東日本四季劇場[秋](東京・竹芝)のオープンを飾るはずの演目だった。しかし、新型コロナウイルスの蔓延で半年間の延期を余儀なくされ、もう1つの新劇場[春]のこけら落とし公演となった。代表取締役の吉田智誉樹さんが、これまでのコロナ禍を振り返る。

「劇団四季は、これまで年間約3100回の公演を行ってきていました。しかし、昨年は上演回数が1500回に半減。緊急事態宣言が解除されて上演を再開してからも、当初は“客席の50%までしか観客を入れてはいけない”という入場規制を守る必要があったため、たとえ“満席”になったとしても、売り上げは半分。2020年の年間損失総額は50億円近くにものぼります」

 コロナ禍に直面した当初、まず吉田さんの頭をよぎったのは、2018年に亡くなった劇団四季創立者・浅利慶太さん(享年85)ならどうするだろうか、ということだった。

「浅利なら、劇団を守ること、存続させることを最優先に行動したと思います。そのためにまずは何をすべきだろうと考えて、動き出しました。

 劇団四季は、全国の小学6年生を無料でファミリーミュージカルにご招待する『こころの劇場』という取り組みをしていました。これは220もの協賛社にご支援をいただいている事業で、その中にはメガバンクもあります。そのため、融資のご相談には温かく対応していただけた。それにより、コロナ禍が終息するまでに数年かかったとしても劇団が存続できるよう、経済的な土台を整えることはできました。

関連記事

トピックス

有村は春子の幼少期を演じた(NHK スクエア)
《オークションサイトに大量出品》有村架純が使用した『あまちゃん』台本が流出、所属事務所は「本人も胸を痛めている」 意外な“出品ルート”も明らかに
NEWSポストセブン
事件が起きてから数日、犯人はまだ捕まっていない(時事通信フォト)
《女子中学生の父親が警察署長情報はデマ》北九州ファストフード店事件をめぐる一連の憶測投稿に当該警察署は「事実ではない」
NEWSポストセブン
不倫旅行を終え、ホテルから出てきた2人
「ホテルというかあれですね…」二階俊博・元自民党幹事長の三男・伸康氏、銀座のバーのママとの不倫旅行スキャンダル 直撃取材に“現在の妻と離婚協議が最終段階”
NEWSポストセブン
1988年、『You're My Only Shinin' Star』で「第30回日本レコード大賞」金賞を受賞した中山美穂
【入浴中に不慮の事故】中山美穂さん、行きつけの焼肉店での”素の表情” 「いつも元気で素敵なまとめ役」だった 母と再婚した義父とも良好な関係
週刊ポスト
前途多難の国民の力代表・韓東勲氏(中央、時事通信フォト)
韓国戒厳令の後始末に奔走した与党「国民の力」韓東勲氏の娘に「MIT不正入学」疑惑 剥いても剥いても疑惑が出てくる“タマネギ男”が追及する泥仕合
週刊ポスト
取材に応じた「釜ヶ崎地域合同労働組合」委員長の稲垣浩氏(筆者撮影)
大阪・西成“あいりん総合センター”建て替えで路上生活者が「強制退去」 抗議活動を行う武闘派労働組合委員長が告白
週刊ポスト
中国発の飲食チェーンである「楊国福マーラータン」のマーラータン(麻辣湯)
〈キモすぎガチで声出た〉虫混入騒動の人気麻辣湯専門店、店員は「虫は野菜に入ってた。洗っているし今はもう大丈夫」実際は乾麺に…運営会社は「調査が終わっていない」と回答
NEWSポストセブン
田村瑠奈容疑者の猟奇的な側面が明らかになってきている
頭部切断事件・田村瑠奈被告(30)は自分の頬に切り込みを入れ…“あちらの世界”の恋人・ジェフの存在と“禍神さまの修行”
NEWSポストセブン
二階俊博・元幹事長の三男・伸康氏が不倫していることがわかった(HP/Instagram)
二階俊博・元自民党幹事長、“後継者”三男・伸康氏の不倫にコメント「知りません」 お相手女性の両親にはすでに“公認の仲”
NEWSポストセブン
北九州市の「マクドナルド322徳力店」で、中学生の男女2人が男に刃物のようなもので刺され、女子中学生が死亡した
《北九州市ファストフード2人死傷》女子中学生(15)は苦しそうにうずくまり…被害者の知人は慟哭「すごく真面目で可愛いくて、家族思いで…それだけはわかってほしい」
NEWSポストセブン
結婚後初めての誕生日を迎えた真美子夫人
大谷翔平、結婚後初の真美子さんのバースデーで「絶景」をプレゼントか 26億円で購入したハワイの別荘は青い海と白い砂浜を堪能できるロケーション
女性セブン
司忍組長も姿を見せた事始め式に密着した
《山口組「事始め」に異変》緊迫の恒例行事で「高山若頭の姿見えない…!」館内からは女性の声が聞こえ…納会では恒例のカラオケ大会も
NEWSポストセブン