4月9日より公開された、NHK連続テレビ小説『おちょやん』などで話題の俳優・若葉竜也(31才)が主演を務める映画『街の上で』。わずか11館での封切りだったにもかかわらず、公開から9日で観客動員数1万人を突破。週末のミニシアターランキングで1位を獲得し、反響を受けて大手シネコンなどで拡大上映される運びとなった話題作だ。SNSでは、「味わい深い作品」、「出演者たちのダラダラとした会話劇が最高」といった言葉が並び、特に若葉の演技を絶賛する声が多く見られる。その理由について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説する。
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公開されるや、大きな反響を呼んでいる映画『街の上で』は、『愛がなんだ』(2019年)や『アイネクライネナハトムジーク』(2019年)などの話題作を手掛けてきた今泉力哉監督(40才)によるオリジナル作品。漫画家の大橋裕之(41才)を共同脚本に迎え、思わずクスッと笑ってしまうユーモラスな人間ドラマを描いている。
物語の舞台は東京・下北沢。下北沢といえば、音楽や演劇、ファッションなどさまざまな独特のカルチャーが根付いている街だ。主人公の荒川青(若葉)は、この街のとある古着屋で働いており、たまにライブへと足を運んだり、馴染みの飲み屋や古本屋に通ったりして日常を生きている。それも、行動は基本的に一人であり、下北沢から出ることはない。ある日、青は恋人にフラれてしまい、落胆の日々を過ごすことに。そんな彼の元へ、自主制作映画への出演依頼が舞い込んでくる。青の日常に、ささやかな変化が訪れるのだ。
この物語は、4人のヒロインが支えている。浮気をして一方的に青の元から去る元恋人役を穂志もえか(25才)が演じ、青が通う古書店員を、現在放送中のドラマ『コントが始まる』(日本テレビ系)に出演中の古川琴音(24才)が務めた。さらに、自主映画を監督する美大生役を萩原みのり(24才)が、今泉監督作『あの頃。』(2021年)にも出演し、自主映画のスタッフの一人を中田青渚(21才)が演じている。彼女たちの“ヒロイン・カルテット”が、青の魅力を「会話劇」によって引き出す役割を担い、下北沢の街で展開される一人の青年のささやかな物語を見事に彩っている。さらには成田凌(27才)や、『おちょやん』で話題となった倉悠貴(21才)も登場。このフレッシュな俳優陣の中心に立っているのが、主演の若葉である。
このところ、映画にドラマに引っ張りだこの俳優・若葉竜也。彼が10代の頃に出演したドラマ『野ブタ。をプロデュース』(2005年/日本テレビ系)が昨年再放送されたことで、そのキャリアの長さを知った人も多いようだ。現在は、映画『罪の声』(2020年)などの大作から『ワンダーウォール 劇場版』(2020年)といった良質なミニシアター作品まで、話題の作品にはことごとく若葉が出演している印象がある。いち観客の視点から見た彼はどの作品においても魅力的だが、本作『街の上で』の若葉を見れば、特に輝きが増しているように思うのではないだろうか。