コロナ禍のあおりで経営が破綻した旅館、破綻せずとも苦境に喘いでいる旅館は数多いが、佐賀県嬉野温泉にある老舗旅館「和多屋別荘」の当主・小原嘉元氏は古き温泉旅館経営のあり方に疑問を抱き、コロナ以前からサテライトオフィス構想を練っていた。そして緊急事態宣言が発令される直前の2020年4月より、客室をサテライトオフィスとして提供するビジネスを本格始動。さらに2021年1月からは「温泉ワーケーション」事業もスタートさせた。両サービスは、和多屋別荘と東京を拠点に地域創生事業、プロモーション事業などを手がけるイノベーションパートナーズがタッグを組み、進められている。
和多屋別荘ならではの「温泉ワーケーション」の内容や料金、今後の課題などについて小原氏とイノベーションパートナーズ社長の本田晋一郎氏に話を聞いた。
温泉入り放題、館内施設使い放題の『温泉ワーケーション』は、結局いくらかかるのか
月額賃料でスタッフが常駐する形を基本とするサテライトオフィスと異なり、「温泉ワーケーション」では入会金と月額会費を支払って会員となった個人や法人が、和多屋別荘内でイノベーションパートナーズが提供しているコワーキングスペースなど各種ファシリティをスポット利用する形になる。
個人の場合は入会金5万円、月額会費3万円。法人の場合は入会金10万円、月額会費30万円(1法人あたり5名まで登録可。利用に際しては代表者もしくは役員の参加が条件)。
宿泊費は別途必要で、そのまま和多屋別荘に泊まる場合は、温泉ワーケーション会員向けの特別宿泊プランが一泊朝食付きで1名1万5000円から。また、会員限定の連泊パッケージも用意されており、3泊4日プランが4万5000円から、5泊6日プランが7万5000円から、14泊15日プランが21万円からとなっている(価格はすべて税別)。
ワーケーション会員はメンバー限定のコワーキングスペース、通常は有料の貸し会議室、プライベートジム、嬉野茶などが楽しめるドリンクバーなどが無料で利用できる(会議室・ジムは要予約)。サテライトオフィス同様、和多屋別荘の温泉は入り放題。佐賀空港、長崎空港、福岡空港から嬉野にある和多屋別荘までの往復送迎にも対応している。
また、温泉ワーケーションでの滞在中は、専用コンシェルジュが利用者を支援。近隣のグルメ情報、観光スポットなどの案内や各種予約代行、ランドリーサービス、モバイルWiFi端末の貸し出しといった滞在中の生活サポートのほか、予定や予算などの希望に合わせた滞在プランも提案可能だという。
はたして、これらの料金をどう見るか。小原氏は「当初からエグゼクティブ層をメインカスタマーに設定した」と明かす。