自分が世の中から切り捨てられたと感じたとき、人はどんな気持ちになり、どうやって生き抜こうとするのか。ライターの森鷹久氏が、業種が「不健全」だと国に名指しされ持続化給付金の対象から外された衝撃と、嘆きつつもたくましく生きていこうとする当事者たちの声をレポートする。
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新型コロナウイルスの感染防止対策で支払われる持続化給付金、家賃支援給付金の対象から外された問題で、関西地方の派遣型風俗店の運営会社が、憲法が保障する法の下の平等に反すると国を相手どり、未払いの給付金や慰謝料など計約450万円を求めて訴えている。その第一回目の口頭弁論が4月15日に東京地裁で行われた。そこで行われた国側の主張が大きな波紋を拡げている。大手紙司法担当記者が解説する。
「国側は性風俗業について『本質的に不健全』とした上で、支給の対象外とした判断は合理的、と主張したのです。国の反論はある程度予想できたことではありますが、不健全だと強い表現で言い切ったことには驚きました。業界に対して市民が持つイメージがあるのは理解できますが、ここまであからさまな主張が出たことに、業界からは強い反発が出ています」(司法担当記者)
原告側は、2020年4~5月、緊急事態宣言に伴う休業要請に応じたにもかかわらず、持続化給付金と家賃支援給付金を受けられなかったのは、職業を理由とした不当な差別だと主張。それに対する国は答弁書で、今まで災害時も公的支援の対象外としてきたこと、過去の判例に従い本質的に不健全なので、給付金の対象外とするのは合理的な区別だと争う姿勢を示した。
筆者はこれまで、複数の風俗事業者に取材をしてきたなかで、法律を遵守し、税金だって納めているのに給付金などを受け取ることができないのはおかしい、という声を聞いてきた。確かに、納税などの義務を果たしている事業者も、不真面目な者たちも「同じ不健全なもの」として判断されては、当事者は理不尽だと思うだろう。
「お金の問題ではなく、私たちの存在自体が否定される、人権の問題になってしまった」
こう話すのは、都内の派遣型風俗店経営者・藤田勝さん(仮名・40代)。昨年4月の緊急事態宣言時、都の「休業要請対象業種」に自社が含まれている事を確認。感染拡大防止協力金が支払われるものだろうと思っていたのだが、その後、都は派遣型事業者には支払われないと説明を変えた。
「協力金だけでなく、持続化給付金もダメ。法律に従って届出も出しているし、税金も払っている。働いている女性も税金を支払い、確定申告も行っている。みなさんと同じように働いて、税金を納めているのに『不健全な業種だから』と言われて……。暴力団でもないし、人を騙しているわけでもない、法に触れる罪を犯しているわけでもないのに不健全と一方的に言われて、社会から追い出されようとしている。不埒な輩が多い業界だから不健全なのか、こういう商売が不健全だと言っているのかもわからない」(藤田さん)