1989年の天安門事件で失脚した改革派指導者で、2005年1月に事実上の自宅軟禁中に死亡した趙紫陽元中国共産党総書記が晩年の16年間を過ごした中国伝統の北京市四合院について、当局が趙氏の遺族に対し、引き渡しを求めていることが明らかになった。
この邸宅は国家財産であり、党指導者やその配偶者のために提供されていたが、趙氏のほか、趙氏の妻もすでに亡くなっているというのが表向きの理由だ。
しかし、ネット上では、この邸宅には趙氏の命日なると、趙氏を慕う人々や海外のメディア関係者らが集まってくることから、「反体制派の人々が現指導部を批判する集会を開くことに警戒しているのだ」との見方も出ている。
香港ラジオ放送局が報じたところによると、党中央委員会関係者が趙氏の邸宅に住んでいる趙氏の長女、王雁南さん夫妻に対して、この邸宅から退去するよう求めたという。
王さん夫妻は「転居先が決まっていないため、すぐには引っ越しすることはできないが、7月ごろまでには出ていくようにしたい」と答えた。
趙氏は1989年6月に失脚するまで、党政府要人の邸宅が集中する中南海に居住していたが、失脚後、警察などによる24時間、365日の監視付き現在の富強胡同の邸宅に移されていた。そのような監視生活は趙氏が死去するまで続いた。
趙氏が亡くなった後、その遺骨は党・政府要人が埋葬される「八宝山革命公墓(墓地)」には納められず、娘夫妻はこの自宅に保管。遺族は趙氏の生誕100年を迎えた2019年秋、北京市昌平区の民間墓地「天寿園」に趙氏と趙氏の妻の遺骨を合わせて埋葬していた。
これについて、ネット上では「天安門事件のきっかけとなった改革派指導者、胡耀邦元総書記は国家が葬式を挙行し、胡氏だけを祀った広大な墓苑に葬られたが、同じ改革派の趙氏だけが、民間の墓地に葬られるなど、肩身の狭い思いをしているのは不合理だ」などとの声が上がっている。