松たか子演じるバツ3女性と、元夫3人の交流を描くラブコメディドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系、毎週火曜21時~)。『カルテット』『最高の離婚』などを手がけた脚本家・坂元裕二による最新作は、主人公と元夫たちの奇妙な関係や掛け合いが話題を呼んでいるが、それ以上に“クセが強い”と評判なのが、ナレーションである。
主人公の行動や思考に合わせて、「おしゃれなカフェにジャージで入れる大豆田とわ子」「床に落ちたパスタは拾いづらい、そんな大豆田とわ子」といった独特のワードセンスとリズムで繰り返されるナレーションが、個性的なハスキーボイスも相まって「クセがありすぎる」「頭から離れない」と大反響。
この声は、プロのナレーターではなく、人気若手女優・伊藤沙莉(26)のものだ。“若き名バイプレイヤー”として数々のドラマ、映画に出演し、お笑いコンビ「オズワルド」のツッコミ・伊藤俊介の妹としても知られる彼女だが、近年は声優としても引っ張りだこ。昨年は、NHK放送のアニメ『映像研には手を出すな』の主人公・浅草みどり役に始まり、アニメ映画『小さなバイキング ビッケ』の日本語吹き替え版でも主人公・ビッケ役に抜擢、『えんとつの町のプペル』でもアントニオという主要キャラを演じている。
それも、話題作りで人気女優を声優に起用するケースとは一線を画し、視聴者や観客も「えっあのキャラ、彼女が声やっていたの?」と後で知って驚くほど自然に声優業をこなしている。ドラマ評論家で『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』などの著書がある田幸和歌子氏が、声優としての伊藤沙莉の魅力を語る。
「ハスキーだけど愛嬌のある声は非常に個性的ですが、とくにアニメ『映像研には手を出すな』では、べらんめぇ調で独特なセリフ回しを見事に演じて話題となりました。もともと原作自体も面白いのですが、アニメ化された作品で伊藤さん演じる浅草みどりを見た時は『これだ!』と思うほど、皆がイメージした通り、いやそれ以上の仕上がりでした。
人前で喋るのが得意じゃないキャラなのに、自分が興味のあることについては、ばぁ~っと言葉が溢れ出す。人と向き合って言葉にはできないけど、自分の中には世界が広がっている……シャイなで口下手、でも溢れ出してしまう情熱。文字にすると女子高生とは思えない口調で、どんな声なんだろうと、皆が想像していたものを彼女が形にしてくれた。それくらい説得力がありました。
声優が本職でもないのに、なぜ、そこまで声で表現できるのか? それは役への理解の深さじゃないかと思います。役どころを深く理解しているから、ファンが想像する更に先の、見たこともないキャラクターに仕上がっているのではないでしょうか」