中国では通信機器やインターネットを悪用した詐欺犯罪が急増しており、昨年1年間だけで、中国公安省は32万2000件の通信ネットワーク詐欺事件を摘発し、36万1000人の容疑者を逮捕し、160万件の偽サイトを摘発した。この結果、被害者数は870万人で、合計1876億元(約3兆円)の被害額を回収したことが明らかになった。
ネット人口 8 億人とも言われる中国では、サイバー空間で、犯罪組織の暗躍と当局とのせめぎ合いが行われており、年々、被害額が増えているのが実情だ。中国政府の発表によると、ネット詐欺で実際に金銭などを騙し取られたのは消費者全体の23%に上るという。
中国国営新華社電によると、中国公安省は4月上旬、北京でオンラインでの大規模な会議を開催し、サイバ―犯罪などの実態と今後の対応について協議した。
それによると、中国では2018年には推定で約40万人が地下のサイバー犯罪ネットワークに関係していたが、2年後の2020年には2.5倍の100万人が犯罪組織にかかわるほど、急拡大しているという。被害額も約150億ドル(約1兆8000億円)だったものが、2020年には225億ドルと1.5倍以上に膨れ上がっているとされる。
その手口も巧妙になっている。大学に合格した新入生が、実家が貧困なために奨学金などの補助を受けようと、大学のホームページから申請をしたところ、「教育省(日本の文部科学省に相当)関連の補助金が支給されることが決まりました。しかし、さきに授業料の一部でも指定の口座に振り込んでください」との連絡を受けた。実は、学生が申し込んだのは詐欺グループの偽のホームページだったのだが、親戚中から借りた1年分の学費など約1万元(約16万5000円)を騙し取られてしまった。その後、学生は騙されたことが分かり、警察に被害届けを出したが、あまりのショックで倒れてしまったという。
一方、実社会の経験が乏しい学生とは違い、知的水準が高い中国の名門大学・清華大学の教授がネット詐欺事件で1760万元(約2億9000万円)という大金を騙し取られたことも大きな話題になっている。この教授は北京市内に所有するマンションの売却代金を詐欺グループの指定する銀行口座に振り込んで被害にあったという。