「『うちは、子どもはいません』。子どもはいるか聞かれたので、そう答えると謝られてしまうことがあります」
と話すのは、子どもがいない女性の会を主催する、くどうみやこさん。自身の問題として、これまで500人にわたる子どもがいない女性たちを取材してきたこの道のエキスパートだ。なぜ謝られるのか、なぜその言葉を放つと気まずい空気になるのか…その背景を聞いてみた。(以下カッコ内、くどうさん)
「子どもは幸せな人生の必須アイテム? 子どもがいないというだけなのに、相手が申し訳なさそうな顔を浮かべ、気まずい空気が流れていく。子どものいない人たちは、似たような経験をしたことがあるのではないでしょうか。
今どき、そんな無神経なことを聞いてくる人はいないというのなら、それは周りに恵まれているのかもしれません。子どもがいない女性の会を主催する『マダネ プロジェクト』では、子どもの有無を聞かれ、いないことを告げたら謝られてしまうことに傷つくとの声が絶えません。
その方の事情を知らないのに、挨拶代わりに悪気なく『子どもは?』と聞いてくる人々。質問したのに相手が謝る背景には、『悪いことを聞いてしまった』との哀れみが隠れているからだと思われます。子どものことを聞かれても、気にしない人や上手く受け流せる人もいますが、人によってはその言葉が刀のように鋭く突き刺さることも」
国立社会保障・人口問題研究所「2015 年社会保障・人口問題基本調査」によると、5.5 組に1組の夫婦が不妊治療を経験している。成功例が取り上げられることも多いが、授からなかった方も多いのが現実。不妊の問題だけではない。病気が原因、パートナーの事情、 経済的なこと、機能不全家族の影響など、子どものいない理由には複雑な事情が絡んでいたりする。職場、地域、親族、友人関係。現代社会において、自分の周囲にも子どもがいない人は誰かしらいるのではないだろうか。
「今は結婚して子どもをもつ生き方があたり前ではなくなっているのに、『子どもはどうするの?』『まだ年齢的に産めるわよ』と、子どもが人生の必須アイテムのように勧められることも。もちろん、子どものいる人生は素晴らしいけれど、子どものいない人生だって素晴らしい。そう認めてもらえるだけで、救われる思いがあります」