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コロナ禍の「働き方改革」の裏で使い倒される非正規社員たちの失望

働き方改革の恩恵には格差がある(イメージ)

働き方改革の恩恵には格差がある(イメージ)

 新型コロナウイルスの感染拡大による影響から、「働き方改革」が進むことになった。仕事が減った職場ではこれ幸いと労働時間の短縮が実施され、業務量が減らない職場でもワークライフバランスがとれた労働環境をめざして残業が減らされた。だが、急激な変化はやはりひずみを生み出していた。ライターの宮添優氏が、労働の調整弁にされている非正規労働者たちの嘆きをレポートする

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 国や自治体の呼びかけもあり、大小を問わず様々な企業で「働き方改革」について議論が活発になされている。いや、改革が必要だとは従前から言われてきたことではあったが、コロナ禍により会社への出社を減らすなどの必要性が増したことで「それならば」と、企業幹部たちが重い腰をやっと上げた、という面もあるだろうか。

 理由はどうであれ、一部大企業などでは、社員の残業や休日出勤を減らすなど、すでに改革に着手し「会社がホワイト化した」という喜びの声も聞こえてくる。一方、この改革、誰にとっても、どんな立場の人にとっても「素晴らしい」ものなのか。雇用者が5人いたとしたら、うち2人が「非正規雇用者」とも言われる昨今。取材を進めると、こうした弱い立場の人に「しわ寄せ」が及んでいる実態が浮かび上がってきた。

「コロナ禍以降、正社員は確かに残業も休日出勤も減りました。在宅ワークが増え出社する必要が減り、早出や残業、出張もほとんどない。働き方改革って素晴らしいな、とえびす顔です。番組で、働き方改革の素晴らしさを特集しよう、なんて言い出す始末。でもちょっと待てよと。我々非正規スタッフは、正社員が抜けた穴を、手当なしで埋めなければならないのですから」

 大阪府内のテレビ局勤務・笹部知明さん(仮名・30代)は、外部の番組制作会社に所属し、派遣スタッフとしてテレビ局内に常駐する情報番組のディレクター。ほんの数年前までは月の残業時間が100時間を超えることは当たり前、朝夕だけでなく、土日祝日の仕事も当たり前という「ブラック」環境で働いてきた。正社員も同じような環境で働いてはいたのだが、大きく違うのはその賃金だ。

「正社員には、残業代も休日出勤手当もバッチリ出るわけです。我々の場合は、全部コミコミの固定給。同じように仕事していても、あっちはどんどんもらえる手当が増えているけど、こっちは働くほど損」(笹部さん)

「働き方改革」が唱えられるようになってから、確かに正社員の仕事の負担は減った。当然残業代ももらえなくなり、不満を漏らす正社員もいるが、元々高給な上、実際に余暇もとれている。高給の正社員が休んでいる間に、手当も受け取れないまま、その穴埋めをしなければならないのが笹部さんたち、外部の非正規スタッフだ。

出社時間や業務量は大幅増、給料は右肩下がり

「残業も休日出勤も増え、給料は据え置き。差別ではないのかと思いますが『それなら社員になればよかったじゃん』と平然と言ってくる正社員もいる。そんな我々が、正社員に命じられて働き方改革を持ち上げる番組を作っているんです」(笹部さん)

 コロナ感染対策のため、そもそも局に出社できる人数にも限りがあったというのだが、ここにきてより強い「制限」の必要性が増してくると、人数を減らすだけでなく、いよいよ業務量自体を減らさないと回らなくなった。しかし、放送自体はコロナに関係なく行われるわけで、正社員が制約によって仕事ができない中、その制約を「正社員ほど厳しく守らなくても良い」存在として、笹部さんのような非正規社員が重宝…というよりは使い倒されている、ということである。無論、出社時間や業務量は大幅に増えているのだが、テレビ局にも吹き荒れるコロナ不景気の厳しい逆風影響もあり、給料は増えるどころか右肩下がりに転じている。

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