日米首脳会談の共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性」が明記されたことに外交関係者は驚きを隠せないでいる。
「台湾」に触れたのは52年ぶり。日本では唐突に思えるかもしれないが、中国は近年、台湾の防空識別圏に戦闘機や爆撃機などを侵入させて挑発を続けている。
米国では議会で米軍司令官が「6年以内に中国は台湾に侵攻する恐れがある」と証言し、武力衝突の可能性が取り沙汰されてきた。
なぜ中国は台湾侵攻への野心をむき出しにするのか。桃山学院大学法学部の松村昌廣教授(国際政治学)はこう分析する。
「背景には経済成長の鈍化がある。以前まで中国経済は10%以上成長していたが、今は3~4%程度に落ち込んでいる。経済が停滞すると共産党は民衆の支持を失いかねない。
そこで、香港を一体化させたように、台湾も組み入れ、経済成長のてこにしたいと考えている。台湾を組み込むことで、民衆のナショナリズムの高揚をはかり、支持を得るという意図もある」
もし台湾が中国に軍事侵略される事態となれば、日本にとっては死活問題になるという。
「中東で石油や天然ガスを積み込んだタンカーは、台湾海峡を通過して日本に入ってくる。ここは日本にとって安全保障上、極めて重要なシーレーン(海上交通路)で、中国が台湾を組み込んでしまうと台湾海峡を使えなくなる可能性がある」(同前)
台湾海峡を迂回すればいいように見えるが、そうなると航路が延び、輸送コストが跳ね上がる。台湾問題は、国民の生活にも直結する事態なのだ。