新型コロナウイルスワクチンの高齢者向け接種が始まった。自治体によって供給量や接種スタート時期に大きな差があることが、連日のように報じられている。その中で使われる用語に注目してみよう。
〈政府は菅義偉首相が表明した7月中の高齢者への新型コロナウイルスワクチン接種完了に向け、全市区町村ごとに配送する量を30日、明らかにする方針を固めた〉(4月30日・共同通信)
〈今月下旬から東京都内の区市町村に届くワクチン量にばらつきが出ている〉(4月22日・朝日新聞デジタル版)
〈東京都は5月10日の週と17日の週に2064箱(1箱195瓶入り)が追加配布される見通しになったことを明らかにした。(中略)追加配布される区市町村別の箱数は、大田区150 世田谷区137 町田市125──など〉(4月26日・毎日新聞デジタル版)
気がつくのは、最初の記事が「市区町村」と書いているのに対し、あとの2つが「区市町村」と表記していることだ。実は、全国において東京都のみが「市区町村」ではなく「区市町村」の呼称を用いている。それが報道にも反映されているのだ。
調べたところ、小池百合子・都知事の会見でも「区市町村」が用いられ、東京都のホームページでも同様に表記されている。
なぜか。東京都に聞いたところ、東京23区が地方自治法(1947年施行)で定められた特別区であることが大きいようだ。
「使い分け方について明文化されているわけではありませんが、特別区がある東京都では人口が区、市、町、村の順に多いため、一般的に区市町村という呼び方をしています。
ただ、職員が担当している区域によっても変わってくると思われます。たとえば、区を中心とした業務をしている者は『区市町村』を使う場合が多いですが、市町村を中心に携わっている者は『市区町村』と呼んでいることもあります。都の議会の答弁などでも人によって『区市町村』『市区町村』を使う方は分かれます」(総務局行政部区政課)
大阪市や横浜市などの政令指定都市にある「行政区」とは違い、東京23区は全国唯一の「特別区」として、市と同様の自治権限がある。その違いが、呼称の使い分けにも結びついているようだ。