中国は近年、台湾の防空識別圏に戦闘機や爆撃機などを侵入させて挑発を続けている。米国では議会で米軍司令官が「6年以内に中国は台湾に侵攻する恐れがある」と証言し、武力衝突の可能性が取り沙汰されてきた。
もし、近い将来に台湾が戦場になれば、日本政府が真っ先にやるべきは邦人救出である。元航空自衛隊三佐で軍事評論家の潮匡人氏がいう。
「台湾には現在約2万人の邦人がいるが、これはコロナ禍で減った数字で、収束して元の水準に戻れば4万人にもなる。それこそ中国から弾道ミサイルが撃ち込まれている中で、これだけの人数をどう救出するのか。
具体的には、オスプレイを活用して在留邦人をピックアップし、輸送機C2、もしくは政府専用機に乗せて帰国させる。場合によっては、陸自の特殊作戦群(特殊部隊)の投入もあり得るかもしれない」
自衛隊が防衛出動した場合、何ができるのか。自衛隊が大きな力を発揮するのが、“海の中”だ。
「自衛隊が台湾有事で活躍できるのは潜水艦の運用です。P1やP3Cといった哨戒機で、中国の潜水艦の位置を探知する。その位置情報を米軍に伝え、米艦艇が対潜ミサイルなどで沈める。自衛隊機が対潜魚雷などで沈めることもできる」(前出・潮氏)
この点については、軍事ジャーナリストの井上和彦氏も口をそろえる。
「海自の『そうりゅう』型やその後継の『たいげい』型は世界最高性能を誇る通常型潜水艦で、性能の高さだけでなく、世界最強の米海軍と共同訓練を行なっているので、練度も高い。
洋上を機動する中国海軍の空母をはじめとする水上艦艇に対しては、高性能の魚雷やハープーン対艦ミサイルで攻撃できる。もちろん中国潜水艦に対しても優位に戦う能力がある。日本の潜水艦が展開するだけで、中国海軍の行動を牽制することができるだろう」
敵の潜水艦を駆逐する戦闘でも、自衛隊に分があるという。対潜水艦では索敵能力が極めて重要で、先に相手を発見したほうが勝つとされている。
「海自の対潜能力(ASW)は世界一とも言われている。海上自衛隊はその誕生から、対潜水艦作戦に重点を置いてその能力向上に努めてきた。保有する護衛艦には最新鋭の対潜装備の他、高性能の哨戒ヘリコプターも搭載している。さらにP1およびP3C哨戒機も多数保有しており、これらを駆使して水中の敵潜水艦を探知して捕促し、対潜魚雷、対潜ロケット、対潜弾投射機で攻撃する。
台湾有事では、表では米中がドンパチやっている中で、文字通り水面下で、潜水艦による“神経戦”が繰り広げられることになろう。日中開戦となれば中国がもっとも恐れるのは海上自衛隊の対潜能力と潜水艦戦力と言っていいのではないか」(前出・井上氏)