冬が明けてみると、インフルエンザや風邪の患者数は例年より少なかった──そんな声が全国各地から聞こえてくる。新型コロナウイルス対策のため、例年以上に手洗いやうがいを実践し、病院などの罹患リスクがありそうな場所には行かずに過ごしたことが功を奏す、なんとも皮肉な結果になった。しかし、病院にいかなかった代償として体の異変を見落としている可能性を忘れてはいけない。例えば、コロナ禍になって歯科健診を受けていないという人もいるだろう。
歯科の現場では唾液による飛沫感染のリスクが指摘され、定期健診を受けなかったり、治療を中断している人も多い。日本歯科医師会の調査では、2020年1~6月に歯科治療を中断した患者が約2割にのぼったことがわかっている。しかしその結果、“コロナ虫歯”が増えている。東陽町歯科医院院長の大谷直さんが指摘する。
「リモートワークで家にいる時間が増えて、仕事をしながら糖分が多いお菓子やジュースを口にする機会が増えています。ただでさえ虫歯や歯周病になるリスクが高い環境なのに、コロナ感染を恐れて定期的なケアを中断している人が多い。
口腔内の状況が悪化すれば、認知症や糖尿病など全身疾患を生む可能性がある。いままでストップしていた人は、ぜひ健診を受けてほしい」
新型コロナの流行から1年以上が経ったいま、多くの歯科医院はさまざまな方法で唾液の飛沫による感染の対策を行っている。いまこそその努力に応え、ふたたび口腔内健診を再開するときだ。
※女性セブン2021年5月6・13日号