新型コロナウイルス感染のリスクから、検診や検査を先送りにしている人が少なくない。感染のリスクを避けるべきだが、命を守るために検診も重要だが、一方で新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんは、ムダな検診もたくさんあると話す。
「必要な検診があるのは事実ですが、受けて得られるメリットよりもデメリットの方が高い検診もある。やみくもに受ければ、健康上のリスクが高まることがあります」
受診することで体に負担をかけたり病気や不調を呼び込んだりと検診そのものがリスクになるものとはどういったものだろう。多くの医師たちが例として挙げたのが、胃のバリウム検査だ。常磐病院乳腺外科の医師、尾崎章彦さんが解説する。
「胃のバリウム検査は、X線で被ばくするうえ、まれではありますが、バリウムが固まって腸に穴が開いて、重篤な合併症を引き起こす可能性があります。身近で九死に一生を得たケースもある。体への負担が大きい割に、胃がんの発見率も高くない。バリウム検査で異常があれば内視鏡検査をするので、最初から内視鏡検査を受けた方がいい」
岡田さんは、肺がんのX線検査について必要ないうえ危険性も伴うと指摘する。
「レントゲンによる肺がん検診では、肺がんによる死亡率を減らせないことがわかっています。むしろ、検診を受けた群の肺がん患者が増加しており、X線の被ばくによるものではないかと推察されます。
そもそも肺のレントゲン検査は結核検査の名残。結核が激減している現代では、検診として受けるメリットはないと考えていいでしょう」
肺がん検診は、精度が高いCTスキャンを受けた方がいいということだ。
実際、過去には肺がん検診での「見落とし」が数回報じられている。
認知症の予防にもなるといわれる「脳ドック」も、わざわざ受ける必要はなさそうだ。岡田さんが言う。
「脳ドックはCTスキャンやMRIを使って、脳動脈瘤や脳梗塞、腫瘍など脳の異常を調べる検査です。ただし実際に、受けた人の寿命が延びたというデータがなく、まさに医療ビジネス。かなりの確率で、さほど問題にならない小さな動脈瘤を見つけてしまいます」
放置しておいても破裂しない動脈瘤を見つけてしまうことで、過剰医療による事故が起きることがある。
「何かあってからでは遅いので、医師は手術で動脈瘤を取ることをすすめます。患者側も、せっかく見つかったからと手術を希望する人が多い。ですが手術がうまくいかずに、神経麻痺の後遺症が残ったり、亡くなる人も。裁判になることもあるのです」(岡田さん)
メリットが疑わしい検診も存在する。尾崎さんが指摘するのは全身のがんを一度に見つけられるという触れ込みのPET検査だ。
「費用が高く、被ばく量も多い。また、少なくとも、早期の乳がんを見つけるのには向いていない。PET検査で異常がなければマンモグラフィーを受けなくていいと思っている人がたまにいますが、大きな間違い。
もし受けるならば、“何を見つけるために”検査をするのかよく相談してから受けるようにしてください。一般に、早期のがんを発見するにはそれぞれの検査を受けた方がいい」(尾崎さん)
※女性セブン2021年5月6・13日号