芸能

世良公則が語るコロナ禍での音楽活動「みんなの心を柔らかくしたい」

ロックの巨匠に聞いた

「何かを発信すれば、反発は当然ある。だがそれもエネルギーだと思っている」

「ライブから2週間が経過しました。今回も感染者の報告はございません。不安の中ご来場頂きました皆様、本当にありがとうございました」。4月24日、世良公則(65才)のFacebookにアップされた一文だ。4月10日、高度の空調換気システムを導入した「よみうり大手町ホール」で開催された『世良公則 KNOCK KNOCK 2021』公演を訪れた放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、コロナ禍でのエンターテインメントへの“想い”について、世良に話を聞いた。

 * * *
山田:ツイスト解散後、ソロデビューから40周年。65才の節目を迎えた世良サンにとって、せっかく大切なメモリアルイヤーのコンサートもコロナのせいで延期が続いてしまいましたね。

世良:今回も、2度の延期を余儀なくされて、出演者のかたに一部変更が出てしまったり、ファンの中にも日程が合わず、来られなくなってしまったかたもいらっしゃいました。でも、こうして多くのかたのお顔を拝見していると、やっぱり待っていてくださったんだなと、うれしいですね。

 ただ、やればやるほど多くの矛盾を感じてしまうのも事実です。ぼくらの仕事は、どうしても大勢のかたが1か所に集まるので、自粛要請が出る前段階、去年の2月くらいからコンサートを行うか否かのミーティングを重ねてきました。

 大げさに言えば、それは国家のためだし社会のため。普段から皆さんにメッセージを届ける立場の人間としても率先して中止や延期をすべきだろうと考えました。聞いた話では、その時点で2~3か月のキャンセルが出てしまったことで、「もう、やっていけない」と小さな制作会社の社長が自ら命を絶たれてしまったと。病気ではなく、経済が原因で亡くなられるかたがいることを早い段階で知りました。

山田:え…? そうでしたか……。お悔やみ申し上げます。観客のわれわれにはなかなかわかりづらいことですが、今日はリハーサルを拝見したことで、多くの皆さんが、さまざまな役割を担って、コンサート成功のために動かれているのを目にいたしました。補償のない自粛要請で失われる命があるということですね。

世良:はい。これはもう1人のアーティストだけの問題じゃないと痛感しました。ぼくがライブを中止したら、スタッフ全員の仕事と人生が飛んでしまうわけです。アーティストのみならず、彼らは全員プロの職人なんです。長年、勉強や経験、キャリアを重ねて、いまの技術を身につけた。そんな優秀なスタッフの仕事がいっぺんに消えてしまう。その責任は、中止を決定した時点ではぼくにあるわけで、「自粛しました」の美談では済まされません。

 ニュースや新聞に出ている企業の倒産件数や失業者の数にはカウントされない人たちが、われわれの周りにはいっぱいいる。エンターテインメントの世界にはフリーランスの人が多いですから、廃業したり、仕事を辞めて故郷に帰ってしまう人たちには目を向けてくれないのが、いまの日本なんです。文化は守られませんでしたよね。

山田:それは大手芸能プロの幹部の皆さんが当初から嘆いていらしたことでもあります。何度も政治家から呼ばれて現状を説明されたそうですけれど、まったく話が通じなかったと。

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン