香港弁護士会が「香港民主主義の父」といわれる弁護士の李柱銘氏ら2人の弁護士資格の剥奪を検討する委員会の設置を決定したことが明らかになった。香港の裁判所が4月下旬、李氏らが開催した2019年8月の民主化集会を違法として有罪判決を下したことを受けて、香港の親中団体が李氏らの弁護士資格の剥奪を求める請願書を弁護士会に提出していた。
また、同じく抗議デモを主催した民主派香港紙「リンゴ日報」の創業者、黎智英氏が有罪判決を受けたあと、「香港記者協会」は「香港の報道の自由指数が過去最低になった」との調査結果を発表。ネット上では「請願が認められれば、香港の法治は失われる」「すでに報道の自由は死んだ」など「香港の中国化」を懸念する声が多数寄せられている。
香港の裁判所の判決によると、李氏や黎氏らは2019年8月、香港在住の市民でも中国政府によって犯罪者とされた場合には中国側に身柄を渡す、という逃亡犯条例改正案に反対するデモや集会を組織。しかし、デモや集会は事前に香港警察に届け出ていなかったことから、香港政府によって訴えられ、裁判所は李氏らに対して、違法な集会を組織・参加した罪で有罪判決を下した。
その後、量刑が言い渡され、李氏は執行猶予付きの懲役11カ月、もう1人の弁護士の呉靄儀氏も執行猶予付きの懲役1年だった。これを受けて、香港の親中派団体は「李氏らは法を守るべき法曹人であるにもかかわらず、法を犯し、有罪判決を受けた。もはや弁護士である資格を剥奪すべきである」などとして、香港弁護士協会の懲罰委員会に「李氏らの弁護士資格停止」を求める書面を提出。弁護士協会はこれを受理しており、懲罰委員会の審議は年内にも終了するとみられる。この審議内容の結果について、弁護士協会は公表の義務はないとされる。
さらに、「リンゴ日報」の創業者・黎智英氏、天安門事件の追悼集会を毎年主催する民主派団体主席の李卓人氏らも有罪判決を受けた。