スポーツ

明徳vs高知 夏を見据えた策士・馬淵監督「手の内を見せる必要ない」

高知高校の森木大智。明徳義塾・馬淵監督も注視している存在だ

高知高校の森木大智。明徳義塾・馬淵監督も注視している存在だ

 各地で高校野球の春の県大会、地方大会が開催されている。コロナによる無観客開催も多いが、指揮官も球児も収束を願いながら、晴れ舞台となる夏の甲子園を見据えている。強豪校はそれぞれ“本番”となる夏の地方大会に向けて、様々な戦略を描く。とりわけ興味深いのが高知だ。甲子園常連校の明徳義塾と世代ナンバーワンとも評価される右腕を擁する高知高校が、互いを意識し合った戦いを繰り広げている。ノンフィクションライター・柳川悠二氏がレポートする。

 * * *
 プロ野球の世界において、試合後の“ぼやき”で野球ファンを楽しませたのが故・野村克也氏なら、高校野球の世界では明徳義塾の名伯楽・馬淵史郎監督(65)がそうした存在だ。とりわけ甲子園で敗れた日のお立ち台では、坊主が説法をするように目の前に陣取る記者を笑わせながら敗因をとうとうと語り、勝負をわけたプレーを忌憚なく解説、最後は「帰って練習します」と必ず口にして甲子園を後にする。「敗軍の将、兵を語る」のが馬淵監督の作法である。

 初戦で仙台育英(宮城)に0対1と惜敗した選抜から一ヶ月あまり、馬淵監督のぼやきを再び耳にすることになったのは、5月1日に香川県高松市で行われた四国大会決勝だった。

 相手は同じ県の高知高校。同校には、中学時代に軟式球で150キロを投げ、スーパー中学生と脚光を浴びた森木大智がエースとして君臨する。

 しかし、この試合では、高知高校の森木も、明徳のエース左腕・代木大和も、先発のマウンドには上がらなかった。春の大会は、秋や夏と違い、甲子園にはつながっていかない大会である。両校共に、夏を睨んで、2番手の投手を先発させたのである。4月11日の春季高知大会チャレンジマッチでも両校は対戦しており、その時は明徳が延長13回タイブレークの末に2対1で勝利していた。

「(チャレンジマッチの勝利により)うちは夏の高知大会の第1シードが決定している。四国大会の勝者が第1シードとなるなら、うちも代木、相手も森木を投げさせたでしょう。負けて良いとは思わんけど、わざわざ手の内を明かすことはない」

 そうしたなか、森木はまずバットで魅せる。4回裏、明徳の右サイドハンド投手のスライダーに、泳ぎながらバットを振り抜くと、風に乗った打球はレフトスタンドに飛び込む。ふたりの走者と共に森木は帰還し、4対0とリードを広げた。強風をも味方につけた技有りの一打を浴びた馬淵監督はこう振り返った。
 
「うまいこと打たれたね。身体が泳いだんだけど、手が伸びたゾーンにスライダーがいってしまって、カツンと打たれてしまった。本当は、サイドスローの投手ならインコースを攻めたいんやけど、デッドボールをぶつけたら何を言われるかわからん。相手は同県やし、投手のインコースを狙う時に気を遣うのは相手も同じでしょう。当ててケガさせたらえらいことやし、彼は逸材。そりゃあ気を遣いますよ」

関連記事

トピックス

公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
立花孝志容疑者(左)と斎藤元彦・兵庫県知事(写真/共同通信社)
【N党党首・立花孝志容疑者が逮捕】斎藤元彦・兵庫県知事“2馬力選挙”の責任の行方は? PR会社は嫌疑不十分で不起訴 「県議会が追及に動くのは難しい」の見方も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の打ち上げに参加したベッキー
《ザックリ背面ジッパーつきドレス着用》ベッキー、大河ドラマの打ち上げに際立つ服装で参加して関係者と話し込む「充実した日々」
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン