東京五輪が開催されたとして──。外国人選手のかなりの人数がワクチン未接種のまま入国する可能性が高い。東京五輪・パラリンピックに来日する選手は約200か国から1万数千人、大会スタッフや報道陣を含めるとざっと6万人と見られている。
IOC(国際オリンピック委員会)は、アメリカのファイザー社とドイツのビオンテック社が選手団向けにワクチンを供与することで合意したと発表したが、全員に行き渡るか不透明であり、何より接種が義務付けられていないという問題が残る。
最大の選手団を派遣すると見られている米国の五輪委員会は「米国代表アスリートにも、他の代表団にもワクチン接種は義務付けない」と表明し、IOCも選手にワクチン接種を義務付けないとしていた。
バッハ会長はその理由を、「(ワクチン接種を)必要条件にするというのは行きすぎ。個人の健康の問題だ。自由裁量に任せる」と説明。丸川珠代・五輪相も「ワクチンを前提にしない大会の準備をしている」と表明していた。
IOCは4月28日の5者協議で「海外選手の6割」がワクチン接種するという試算を報告した。その数字を鵜呑みにしても海外選手の4割が未接種で入国し、優先接種されない日本人選手は全員未接種で大会に臨むことになる。期間中、選手が相部屋で共同生活をする五輪選手村での感染リスクは避けられそうにない。
観客の感染リスクも大きい。五輪の来場者数(観客数)は満席でのべ約1000万人、「観客5割」に制限しても500万人が来場する計算だ。
6万8000人収容の新国立競技場の一般座席の幅は45センチ、観客5割で1人おきに着席してもソーシャルディスタンスは取れない。他の会場も同様だ。こんな条件下での五輪の開催は、感染拡大で東京を焦土にするようなものだとわかる。
写真/時事通信フォト、共同通信社
※週刊ポスト2021年5月21日号