吉沢亮が「日本資本主義の父」実業家・渋沢栄一を演じて話題のNHK大河ドラマ『青天を衝け』。注目すべきは「平」がつく2人の登場人物だという。コラムニストで時代劇研究家のペリー荻野さんが解説する。
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いよいよ主人公の渋沢栄一(吉沢亮)が一橋家の家臣となり、京都編が始まった大河ドラマ『青天を衝け』。レギュラーかと思われた徳川家康様(北大路欣也)が登場せず、大騒ぎとなったが、ここでは今後の物語でマークしたい「平」がつく人物ふたりについて書いてみたい。
「平」のひとりはもちろん平岡円四郎(堤真一)。旗本の家の生まれだが、短気なべらんめえのお兄いさんという雰囲気の円四郎は、推薦されて嫌々、一橋慶喜(草なぎ剛)に仕えるが、慶喜の人柄に感銘を受けて命がけでこの殿を守ると決意。身分に関係なく、鼻息荒く動き回る栄一と渋沢喜作(高良健吾)と知り合い、うちで働かないかと声をかけ、断られたのに「気が変わったら来な」と声をかけていた。
先日放送された第13回「栄一、京の都へ」は、円四郎が主人公といってもいい展開だった。妻のやす(木村佳乃)には目尻を下げてデレデレの円四郎は、やすに「こんなの」と栄一と喜作の顔マネでふたりの人相を説明。一方、京では「なーにが新しい世だ!!」と他藩の殿様の発言を目を三角にして批判したり、ドジな栄一たちに「はあっ!?」「そんなこったろうと思ったぜ」と呆れ顔になったりと、次々顔芸を炸裂させる。
だが、締めくくりは無鉄砲なふたりが生き残ってきたことに感心し、「悪運が強いところも気に入ってる」と笑顔だった。
これまで平岡円四郎は大河ドラマ『徳川慶喜』では新井康弘、『西郷どん』では山田純大が演じてきたが、攘夷派からは敵とみなされてきたせいか、あまりクローズアップされてこなかった。今回、堤真一が愛嬌たっぷりに演じてきた平岡の思い、生き方が渋沢にどう影響を与えるのかは重要だ。私の予想では渋沢の晩年、「俺の眼に狂いはなかったぜ」と幽霊として出てくるのではという気もする。