大相撲5月場所は白鵬が初日から休場し、6場所連続で横綱が不在となる“国技の危機”が叫ばれている。そうしたなか、力士を養成する「相撲部屋」にも静かに危機が迫る。2004年に55部屋まで増えた相撲部屋は、いまや42部屋まで減少しているのだ。
ハワイ出身の元関脇・高見山が1986年に創設し、横綱・曙らを排出した東関部屋も4月1日に35年の歴史に幕を下ろした。2019年12月に高見山から部屋を継いだ元前頭・潮丸が急逝したからだ。閉鎖した東関部屋では、元・高見盛が「東関」を襲名したものの、部屋を継ぐ意思のない“暫定的な師匠”ということで、高砂一門から後継者を探したが見つからなかった。東関部屋の建物は先代の元・潮丸の遺族が所有したままだ。
「元・高見盛のケースで言うと、物件の所有者が先代親方のままだと、継承した親方が部屋運営の主導権を握れない。先代としても、部屋の弟子から土地・建物を丸ごと買える資金力のある力士が出てきて親方になったら、そっちに物件を譲りたいという話になる」(協会関係者)
東関部屋が後継者を見つけられなかったのは、一門の本家にあたる高砂部屋の後継と時期が重なったことも影響したようだ。昨年12月には高砂親方(元大関・朝潮)が65歳の定年を迎えた。70歳まで再雇用で協会に残るものの、部屋持ち親方にはなれない。後継者選びには、様々な意図があったとみられている。
「当初、後継者は近大相撲部出身の後輩である若松親方(元前頭・朝乃若)とみられていたが、土壇場でモンゴル出身の錦島親方(元関脇・朝赤龍)が新たに『高砂』を襲名することになった。継承後も、部屋の土地・建物は元・朝潮夫妻の所有のままです。部屋所属の現役大関・朝乃山が、将来的に土地・建物ごと継承するシナリオがあるとされ、元・朝赤龍はそれまでのワンポイントとして都合がよかったのではないか」(高砂一門関係者)
※週刊ポスト2021年5月21日号